葛飾区内を縦断する貨物線「新金線」の旅客化に向けた検討報告書がまとまりました。果たして旅客化は実現するのでしょうか。
東京都葛飾区やJR東日本、JR貨物、京成電鉄などで構成する新金線旅客化検討委員会は、葛飾区内を縦断する貨物線「新金線」の旅客化に向けた検討報告書を取りまとめました。これまでの鉄軌道による旅客化案に加え、BRT(バス高速輸送システム)による旅客化も検討していく方針を明らかにしています。区は今後、今回の報告書を踏まえて旅客化の実現を目指す方針です。
2025年3月9日に両国~水戸間で運行された第5回新金線旅客化記念号(乗りものニュース編集部撮影)
新金線は総武線の新小岩付近(新小岩信号場駅)と常磐線の金町をつなぐ、約6.6kmの貨物線です。単線ですが、貨物線の西側に複線化用地が確保されています。現在は1日あたり、上下9本の貨物列車が走っており、これに加え、JR東日本の工事用臨時列車や団体臨時列車が走っています。
2025年3月9日には旅客化の機運を盛り上げるため、市民団体「新金線いいね区民の会」による団体臨時列車が両国~水戸間で運転されました。
報告書によると、旅客化は「既存の貨物線の線路を旅客車両が走行する整備方法(LRT)」「複線用地に新たに鉄軌道を整備する方法(LRT)」「複線用地に新たに専用道路を整備する方法(BRT)」が想定されています。
なお、貨物列車や工事用臨時列車の運行は今後も存続する前提で、鉄道用地の活用を基本とし、一般用地の活用は最小限となるように検討したとしています。
区はこれまで、「普通鉄道」と「LRT」の比較検討を行っており、鉄軌道による整備方法を想定していました。ただ、平面交差する新金線と国道6号との交差方法、高架化が必要になる「高砂踏切」付近や金町駅への接続など、施設計画上の課題によって事業費増大が確認されたため、BRT案が浮上してきた形です。
費用対効果(B/C)が1を下回るケースも「既存の貨物線の線路を旅客車両が走行する整備方法(LRT車両)」は、国道6号との交差を旅客線・貨物線ともに高架とする「ケースA」、平面交差とする「ケースB」を想定。
「複線用地に新たに鉄軌道を整備する方法(LRT車両)」は、国道6号との交差を旅客線のみ高架する「ケースC」、平面交差の「ケースD」を想定。所要時間は約23~26分となる見込みです。事業費は約700~800億円で「費用対効果(B/C)」は約0.8~0.9となり、1.0を下回ります。
「複線用地に新たに専用道路を整備する方法(BRT車両)」の場合、国道6号との交差を全線専用レーンとする「ケースE」と、一部一般道を活用する「ケースF」を想定。所要時間は約26~28分となる想定です。事業費は約280~560億円で「費用対効果(B/C)」は約1.1~1.7です。
なお、LRT車両の場合(ケースA~D)、運行本数はピーク時8本、オフピーク時4本。BRT車両(ケースE~F)の場合はピーク時10本、オフピーク時6本が想定されています。
報告書では、各ケース間で事業性、機能性、施設計画において課題が異なると指摘。所要時間の短縮や資金調達方法など、更なる機能性や事業性の向上についても検討を深めていくことが望ましいとしています。
新金線旅客化方針検討会では、「早期実現を最優先すべき」という意見が相次いでおり、区は方針を早期に決定していくとしています。