ANAの旅客機格納庫見学ツアー「ANA Blue Hangar Tour」。駅を下りたところから特別感に包まれる“進化したツアー”は、リピーターも多いといいます。
東京モノレールの羽田空港行きを利用したことがある人は山ほどいると思いますが、羽田空港第3ターミナル駅(MO08)と羽田空港第1ターミナル駅(MO10)の中間に位置する「新整備場」駅(MO09)で降車したことのある人は非常に少ないのではないでしょうか。
格納庫で見学できたボーイング787-9。詳しい人は「JA808A」というレジ番を見るだけで機体を判別できるらしい(あさのまさひこ撮影)。
「その駅、ようは空港職員が使うんでしょ?」と思ったアナタ、半分アタリで半分ハズレです。1日の平均乗降客人数は現在5000人ほどで、この中に含まれる半数が鉄オタならぬ“空オタ”。航空機や航空会社のファンが訪れる、日本の航空会社が運営する旅客機格納庫見学ツアーに参加する人たちなのです。
というわけで今回は、ANAの旅客機格納庫見学ツアーである「ANA Blue Hangar Tour」に行って来たインプレッションを綴ってみたいと思います。
貴方のスケジュールと折り合いがあえばなんと0円!ツアーの申し込みはまずインターネットから、ANAプライベートポリシーに同意してスタートします。その後、ネット上のカレンダーで予約状況を確認。1日5回のツアーが組まれており、貴方のスケジュールの折り合いさえ付けば、すぐにでも旅客機格納庫見学ツアーが予約できちゃうのです。参加費用はなんと0円!
もっとも、週末のツアーを抑えるのは相当に難しく、仮に貴方が「週末のツアーしか行くことができない」という場合はかなりの予約枠争奪戦になることを覚悟してください。
そしてANA Blue Hangar Tourのはじまりは、新整備場駅出入り口すぐの場所に送迎用の専用バスが着けられ、ちょっとした特別感を得られます。以前はANAの旅客機格納庫まで15分歩かなければならず、その中途半端な距離になんともモヤモヤしたのですが(夏だとそれだけで汗だくですよ!)、専用バスが用意されてからは、モヤっとした気分は払拭されました。
格納庫に着くと、ブリーフィングという名のお話会からツアーがスタート。ブリーフィングと言うほど堅苦しいものではなく、この先に行われる格納庫見学ツアーにおける注意点を簡潔にまとめて情報を伝えるミーティングです。
「旅客機デケェェェェ!」というより「そこ、そんな汚れてるんだ!」その後は専用ヘルメットを装着し、いよいよ旅客機格納庫見学に移ります。

エンジンカバーが外された状態のB787。「メカ心」が癒やされる(あさのまさひこ撮影)。
「想像していた以上に旅客機がデカくてその迫力にびっくりした!」と、人によっては思うかもしれませんが、筆者(あさのまさひこ:模型文化ライター)の場合は「旅客機のサイズは想像通りだけれど、旅客機の解像度がぐっと高まってその感覚差にぐいぐいと引き込まれた」という感じでしょうか。
個人的に大好きなボーイング787のエンジンカバーが整備用にパッカ~ンと開けられていたり、騒音を抑制するシェブロンノズル(エンジン排気口後端のギザギザ構造)の汚れ方がよく分かってシビれたり、もうたまりません!
あとは……そう、メカね! やはりメカ! 脚は収納庫にギリギリまで寄って写真撮影ができますし、これはオフィシャルな旅客機格納庫ツアーじゃないと実感できない体験です。
ただ、どんな機材が格納庫内に入っているか、これは当日ツアーに行ってみないと分からないガチャ状態です。自分にとってアタリな機材が入っていると当然ながら高揚しますし、ハズレな機体しか入っていないとショックが大きいし……旅客機格納庫ツアーのリピーターが多い理由はここにあったりするんだと思います。
あと、ANA全面協力で撮られた映画『ハッピーフライト』(2008年)で印象的に描かれていた、「工具一本でも見つからなかったら仕事を上がって帰れない」という整備士さんの工具が棚にビッシリと並べられていたりするあたりは、「映画のままじゃん!」とうれしくなるポイントでした。
今回のツアーで筆者がたまたま遭遇した“旅客機萌え”なポイントは、乗客用のシートが3-4-3列のレイアウト状態で機外に並べられていたこと。
この後、これらは新たなシートとして777あたりの機体にセットされるのか、もしくはその真逆で古いシートとして廃棄されるのか(航空系専門学校に譲渡されるというケースもあり得るとか)、それは分からないものの、いずれにせよこのあたりが、戦闘機と異なる魅力だと思うわけです。
駆け足状態で巡ってきたANA Blue Hangar Tourのバーチャル体験、楽しんでいただけましたでしょうか。これがタダで楽しめるんですよ!