「初の米国産超音速旅客機」の実現を掲げ、その前段として「世界初の独自開発超音速ジェット機」の開発に成功したブーム。同社は最終目標に向け、どのようなアプローチを行うのでしょうか。

同社に取材しました。

最速2029年に実用化か

「コンコルド」以来の、そして、アメリカ初の超音速旅客機の開発を目進めている、スタートアップ航空機メーカーの「ブーム」。同社が「世界初の独自開発超音速ジェット機」として開発した試験機XB-1が実際に音速突破に成功して飛行試験を終えました。次はどんなステップで、超音速旅客機の実用化へのステップを踏むのでしょうか。また、新たな試験機を飛ばす可能性はあるのでしょうか。

「世界初の独自開発超音速ジェット機・改」は飛ぶ? 「21世紀...の画像はこちら >>

「XB-1」(画像:ブーム)

 今回、筆者はブームより今後の展望についてコメントを得ることができました。

 ブームの最終目標は、マッハ1.7で飛ぶ超音速旅客機「オーバーチュア」を実用化させることです。「オーバーチュア」はすでに顧客からの受注を獲得しており、最速2029年の就航がアナウンスされています。

 とはいえ、本格的な商業飛行をした超音速旅客機は、歴史上「コンコルド」のみで、それさえも2003年10月に終了。アメリカ自体は航空大国でありつつも、ボーイングなどが計画したのみで、超音速旅客機の商業運航を成し遂げていません。

 さらに「オーバーチュア」は、ただ高速性に“全振り”したわけではなく、現代の民間航空業界のニーズに応えたモデルであることが打ち出されています。つまり、高速性と二酸化炭素(CO2)の排出削減と騒音の抑制の両立です。

 これを実現するため、たとえば、エンジンの後ろに付けて推進力をアップする「再燃焼装置」を使わずに超音速での巡航飛行を目指すなどの試みが図られる予定です。

 この「オーバーチュア」実用化へ向けた各種試験を行うために作られたXB-1は、2024年3月に初飛行。2025年1月と2月に音速を突破し、13回の試験飛行を完了しています。これらの試験飛行では、超音速巡航飛行などさらに踏み込んだ試験は行わなかった模様。このためXB-1は基礎飛行試験用の機体だったと見られます。

 そうしたこともあってか、XB-1の姿は、すでに公開されている「オーバーチュア」の姿と比較して、設計はおろか、エンジン数すら異なっていました。このため、最終目標の実現のためには、全体計画として次はどんなステップへ進むかが気になります。

 そうした経緯もあり「XB-1に続く試験機をつくる計画はあるか」という趣旨の質問をしたところ、同社からは次のような返答がありました。

新たな試験機つくるの?ブームの答えは

 まず同社は「2025年2月10日に行ったXB-1の2回目の超音速飛行により、画期的な飛行試験プログラムの終了を告げた」とし、続いて「XB-1は製造されたコロラド州デンバーへ戻るため現在輸送中であり、今後はXB-1で得た“知見と技術を広げて”『オーバーチュア』の製造へ全力を注ぐ」と現況をコメントしています。

 XB-1に続く試験機の開発へ具体的な答えはなかったものの、「知見と技術を広げて」としていることに、「オーバーチュア」と同じサイズのものも含めた、新たな試験機の製作の可能性も含め、さまざまな検討をしているところでしょう。

 また、ブームは、2024年のファンボロー航空ショー(イギリス)で「オーバーチュア」の操縦席シミュレーターを展示するなどし、世界的な航空業界の“祭典”で「コンコルド」以降の技術の進化をアピールしました。

 2025年6月には、ファンボローと双璧の、かつ世界最大規模の業界向けイベントであるパリ航空ショーが実施されるわけですが、同社はこれに対し「『オーバーチュア』旅客機と装備するシンフォニー・エンジンの製造に完全に集中しているため出展しない」と、返信にありました。

これは、広くアピールする場を差し置いても、今後の計画へ細部を詰めることを最優先事項として掲げているのでしょう。

 2025年現在は「コンコルド」の設計や製造が始まったころよりも、設計用コンピューターや3Dプリンターなどにより製造技術は格段に進化しています。これらをいかにうまく活用して、「オーバーチュア」がいつ本格的な製造に入るのかが注目されます。

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