西武バスが、路線パスの「宿20」系統を減便するほか、「宿20-1」を廃止します。これらは池袋駅を発着する西武バスでは珍しい路線です。

今回、廃止を間近に控えた「宿20-1」に乗りました。

「宿20」は減便、「宿20-1」は廃止

 西武バスが2025年6月1日(日)にダイヤ改正を行い、東京・池袋駅前の西武百貨店前から中井駅を経由して新宿駅西口までを結ぶ「宿20」系統のダイヤを変更するほか、付帯する「宿20-1」系統を廃止します。ダイヤ改正日の6月1日は日曜ですが、「宿20」や「宿20-1」は日曜の運転がなく、「宿20-1」は5月31日(土)が最終運行日です。今回、この廃止前の「宿20-1」に乗ってみました。

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今回廃止される西武バス「宿20-1」系統(柴田東吾撮影)

 先の通り、「宿20」は西武百貨店前から中井駅を経由して新宿駅西口までを結ぶ路線で、西武の路線バスが池袋や新宿まで顔を出す珍しさで知られています。付帯路線として、途中のバス停を起終点とする「宿20-1」(西武百貨店前~目白五丁目)と、「宿20-2」(中落合→中野坂上→新宿駅西口)が設定されています。

 2025年5月時点で、「宿20」は平日2往復半(新宿駅西口発3本、西武百貨店前発2本)と土曜2往復が設定され、日曜と休日は運休。「宿20-1」は平日1便(目白五丁目行き)と土曜1往復、「宿20-2」は平日朝1便(新宿駅西口行き)だけ運行されています。

 ダイヤ改正で、「宿20」は平日朝の1往復だけに減便され、土・日曜と休日は運休に。そして「宿20-1」は廃止されますが、「宿20」と「宿20-2」は引き続き平日朝に運行されます。

 今回廃止される「宿20-1」は、西武百貨店前~目白五丁目間3.74km間を20分で結んでいます。西武百貨店前バス停は西武池袋線の池袋駅や西武百貨店の前にあり、バス停には「池袋駅東口」と表示されているため、「宿20」の行き先表示も「西武百貨店前 池袋駅東口」と併記されています。

 隣には都営バスの池袋駅東口バス停もありますが、ここから発車する都営バスのうち、「池65」(池袋駅東口~江古田二丁目・練馬車庫)と西武バスの「宿20-1」は全区間が重複しています。「宿20-1」は「池65」の一部とも言えるのです。

レア系統に偶然乗り合わせた利用者たち

 さて早速、廃止を控えた西武バスの「宿20-1」に乗りました。西武百貨店前を発車した「宿20-1」は明治通りを南下し、人や車で混み合う繁華街を抜けていきます。

 乗客は「池65」のバスを待っている人が流れて来た形が大半であり、筆者(柴田東吾:鉄道趣味ライター)のような「乗り納め」とみられる利用者は皆無です。途中からの乗り降りもあるため、実態は「1日1本のレア系統のバスに偶然乗り合わせた」と言って良いのかもしれません。バスの利用者には高齢者もいましたが、その数はそれほど多くはありませんでした。

 繁華街を抜けると千登世橋というバス停を過ぎ、明治通りを右折して目白通りに入ります。千登世橋の東側には地下鉄副都心線の雑司が谷駅や都電荒川線の鬼子母神前停留場がありますが、バスの車窓からは副都心線の駅の出入口が見える程度です。

 目白通りを西進すると目白橋という陸橋を渡りますが、この下にJR山手線の目白駅があります。目白駅は山手線の単独駅なので、山手線が運休する際にはマスメディアの間でしばしば「陸の孤島」になるとして取り上げられますが、駅前からすぐバスに乗れます。

 そしてここ「目白駅前」バス停で、客の多くが入れ替わりました。

数人降りて数人乗るといった具合で、目白駅前から乗ってきた乗客も2~3個先のバス停で降りて行きました。

 目白通りをさらに西へ進み、山手通りと交差する南長崎一丁目交差点(東京都豊島区)の手前に、終点の目白五丁目バス停があります。

 到着時、バスには数人の乗客が乗っていましたが、このバスが「目白五丁目」で終点になるとは気づかず、後続のバスに乗り換える人もいました。

「宿20」が単独で走る区間はどこ?

 目白五丁目バス停は、西武池袋線の椎名町から南へ500mほどの場所に位置します。西武新宿線の下落合駅や中井駅、都営大江戸線の落合南長崎駅や中井駅からも歩いて1km弱の距離にあるほか、関東バスの「宿02」系統(新宿駅西口~丸山営業所)、都営バスの「白61」系統(新宿駅西口~練馬車庫・練馬駅)などの路線も目白五丁目を通っています。

「宿20-2」はここで終点ですが、「宿20」はこの先、南長崎一丁目交差点を左折して山手通りを南下し、中井富士見橋という陸橋で西武新宿線中井駅を跨ぎます。この付近の山手通りは都営大江戸線や首都高速中央環状線が地下に整備されるとともに、地上の山手通りも広い歩道を備えた道路に改装されました。

 この先の中野坂上交差点(東京都中野区)で山手通りを左折して青梅街道に入り、道なりに東進して新宿大ガードの手前で右折すると新宿駅西口に至ります。地下鉄の路線でいえば、都営大江戸線に乗って中野坂上で丸ノ内線に乗り換えて新宿に向かうイメージです。新宿駅西口では、時計回りにラケット状の路線を描いて折り返しています。

「宿20」の単独区間は目白五丁目~中野坂上間ですが、この区間の大半は都営大江戸線が地下に並走しています。中野坂上~新宿駅西口間は、丸ノ内線に加えて、「王78」(新宿駅西口~王子駅)や「宿91」(新宿駅西口~新代田駅)といった都営バスの系統も設定されています。

 このように「宿20-1」が走る池袋~目白五丁目間、「宿20」単独となる目白五丁目~中野坂上間、中野坂上~新宿間ともに、他のバスや鉄道の代替路線が確保されています。そうしたなかで、西武線にとっても二大ターミナルがある池袋と新宿を結ぶ「宿20」は、平日1往復のみながら維持されることとなります。

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