JALの長距離国際線で運用されてきた「ボーイング777-300ER」の初号機「JA731J」に、退役整備が行われています。この作業は、どのような特徴があるのでしょうか。
長年JAL(日本航空)の長距離国際線で運用されてきた「ボーイング777-300ER」の初号機「JA731J」が2025年5月27日を持って、定期便から退役しました。この機体は、JALの格納庫で「退役整備」が行われたのち、売却先に引き渡される予定といいます。この退役整備は、どのような特徴があるのでしょうか。今回、実際に作業の様子を見ることができました。
JALの777-300ER「JA731J」(乗りものニュース編集部撮影)。
JA731Jは2004年6月15日にJALへ受領され、2004年7月1日の成田―シンガポール線で定期便デビュー。そののち、長らく長距離国際線をはじめ、さまざまな路線へ投入されてきました。JALによると5月26日時点における飛行時間は約8万7610.85時間、飛行回数に相当する「サイクル数」は1万604回にものぼるとのことです。なおこの機体は、JALへ引き渡される前は、製造元のボーイングで飛行試験機として運用されていたという経歴を持ちます。
これまでJALでは777-300ERのほかに姉妹機である777-200、777-300、777-200ER、合計4タイプのボーイング777シリーズを運用してきましたが、2025年5月現在、-300ER以外の機種は退役済みです。-300ERは777シリーズの初期タイプだった-200から胴体延長と航続距離の延伸が図られたモデルで、75m近い胴体長と1万4000kmを超える航続距離を持っています。
JA731Jの機内に入ると、シートモニターなどの一部部品が取下ろされていました。こうしたパーツは、今後残る777-300ERで再利用される予定とのことです。また同型機の大きな特徴である世界最大の推力(11万5000ポンド)を持つ旅客機むけエンジン「GE90-115B」も取り外され、検査を受けている状態です。

退役整備を受けるJALの777-300ER「JA731J」(乗りものニュース編集部撮影)。
また担当者によると、取材時点でJALのロゴマークや尾翼の「鶴丸」は残っていますが、退役整備の一環で、これらは真っ白に塗り替えられる予定とのこと。また、機体パーツの細部に至るまで、潤滑油をさすといった措置も講じられているといいます。さらに整備作業にあたっての文書作成も、時間を要す工程のひとつなのだそうです。
20年以上運用されたJA731Jですが、筆者が見た限りでは、細部を見てもそこまで年数が経った機体とは思えないようなコンディションに見えました。
JALで運用されていた777シリーズは、現在も海外の航空会社で現役運用されている機体も少なくありません。代表的な例は2003年から2021年まで「JA704J」として運用されていた777-200ER。この機体はNASA(アメリカ航空宇宙局)の次世代「飛行科学研究所」として引き取られました。