千葉県の幕張メッセで開催された「DSEI Japan」にあったスウェーデンのサーブ社ブースにゲームセンターのような射撃システムがありました。実は、これ屋内でも実施可能な無反動砲の射撃シミュレーターだとか。

実際に撃ってみました。

屋内でも対戦車戦闘の射撃訓練できます!

 2025年5月に千葉県の幕張メッセで開催された国内最大の防衛・安全保障展示会「DSEI Japan2025」において、スウェーデンのサーブ社が無反動砲「カールグスタフ」の最新モデルであるM4の展示模型と、その射撃訓練用のVR(仮想現実)シミュレーターを展示しました。

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演習場で行われている陸上自衛隊の84mm無反動砲の射撃訓練(画像:陸上自衛隊)。

「カールグスタフ」は、サーブが開発した肩撃ち式の個人携行型無反動砲です。84mm口径の各種砲弾を射撃することができ、砲弾の種類に応じて装甲車両や陣地などの構造物攻撃から、発煙弾や照明弾による支援任務まで幅広く対応できるのが特徴です。その性能の高さから世界40か国の軍隊で使われており、日本の陸上自衛隊も「84mm無反動砲」の名称で全国の部隊に配備しています。

 M4と一緒に展示された射撃訓練用のシミュレーターは「インドア・トレーナー」と呼ばれており、コンピューターシミュレーションとVR技術を活用して、実弾を撃つことなく射撃訓練が行える訓練装置になります。

 コントローラーとなる模擬ランチャーは、実弾こそ撃てませんが、本物のカールグスタフM4の設計図をベースにしており、形状や重量だけでなく、構えた時のフィット感まで同じに作られています。照準器の調整や弾頭の装填など機器の操作手順も本物と同じです。シミュレーター内の射撃についても、砲弾の飛び方は本物と同じ正確な弾道シミュレーションがされています。

 照準用スコープを覗くと、その中にはコンピューターグラフィックで再現された射撃場が表示され、標的となる戦車や装甲車も出現します。模擬ランチャーを動かすとスコープ内のVR世界も連動して動き、標的に照準から射撃までをリアルに体験することができます。

 この「インドア・トレーナー」のメリットは、手間や予算の掛かる実弾射撃を減らして訓練コストを下げるだけではありません。コンピューターで作られたシミュレーターであるがゆえにその環境を自由に変えることができ、実弾射撃訓練では体験できない状況下での訓練が可能な点も挙げられます。

VRだからできる 兵士の技量を丸裸にする分析能力

 筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)が実際に「インドア・トレーナー」を試したときには、標的はロシア製と思われる主力戦車と歩兵戦闘車でした。各標的は形状だけでなく内部の装甲形状や防御力まで再現されている模様で、こちらが発射した弾種や命中箇所によって受けるダメージが異なるほどです。仮想敵国の兵器を標的にした実弾射撃訓練を現実に行うのは難しいため、それが自由にできるのはシミュレーターならではの長所といえるでしょう。

屋内で好きなだけ射撃OK! 北欧製「ガチ訓練用の大砲」隊員のクセまで丸裸に
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カールグスタフM4の「インドア・トレーナー」。左がプログラムを動かすノートパソコンで、右のスタッフが持っているのが模擬ランチャー。非常にコンパクトで、室内で訓練を行うことができる(布留川 司撮影)。

 また、シミュレーターでの射撃はすべての動作がパラメーターで記録されており、射撃後に訓練を受けた人の能力が数値で見ることができます。たとえば、ランチャーを動かして照準を合わせるときも、その動きと合わせるまでの時間は記録に残り、その様子をリプレイで見ることもできます。また、ランチャーの引き金にかかる圧力も数値として記録されているため、初心者がよくやる急激に引き金を引いて照準が狂う「ガク引き」の徴候も知ることができます。

 この「インドア・トレーナー」では、標的に射撃が当たったかどうかを単純に判断するのではなく、使用した人間のVR世界での一挙手一投足をデータとして記録し、その技量を数値で示すことができるのです。

 訓練用シミュレーターといえば、昔は訓練を補助する簡易的な装置という認識がありました。しかし、近年はコンピューターやグラフィック性能の向上や、没入感を高めるVR技術の発展によって、その内容も大きな進化を遂げており、現実世界の訓練ではできない特殊な環境を作り出すことも可能となっています。

 こうしたことから訓練体系も大きく変化しており、今後は「インドア・トレーナー」のようなシミュレーターを活用する機会が増えていくのかもしれません。

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