艦艇がミサイルを発射する動画を見ると、激しく炎を上げながら筒から発射される場合と、「スポンッ!」とミサイルが筒から射出され、その後にメインエンジンに点火される場合があります。なぜでしょうか。
艦艇がミサイルを発射する動画を見ると、「ブオオオオオオ!」と激しく炎を上げながら筒から発射される場合と、「スポンッ!」という音とともにミサイルが筒から射出され、その後にメインエンジン(ロケットモーター)に点火される場合があります。実はこの2つは異なる発射方法が使われています。
「ホットローンチ」である、まや型護衛艦のVLSから発射されるミサイル(画像:海上自衛隊)
ミサイルが収納されている箱型や筒状の入れ物である「キャニスター」や、甲板上に複数設置された垂直発射装置であるVLS(ヴァーティカル・ローンチ・システム)から、激しく炎を上げて発射されるミサイルは「ホットローンチ」という方式が採用されています。
この方式は、ミサイルのエンジンをそのまま発射筒内で点火するもので、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦や日本の海上自衛隊の護衛艦に搭載されているVLSもこの発射形式を採用しています。
また、地上に配備されている防空用の「パトリオットミサイル」の発射装置も、エンジンに直接点火するためホットローンチ方式です。
ホットローンチの利点は、発射システムが比較的シンプルで設計が容易なことです。エンジンを筒内で点火して発射するため、発射までのタイムラグが少なく、製造コストも低く抑えられます。
その一方で、VLSでは発射装置に熱や圧力によるダメージが加わるため、メンテナンス頻度が高くなるというデメリットもあります。
「スポンッ!」はコールドローンチこれに対し、発射管からミサイルを射出した後、一定距離を飛行してからメインエンジンに点火する方式は「コールドローンチ」と呼ばれています。

SLBMは代表的な「コールドローンチ」使用例(画像:アメリカ海軍)
代表例としては、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や巡航ミサイルを発射する水中発射型VLSを搭載した潜水艦が挙げられます。
アメリカやロシアの原子力潜水艦がSLBMを発射する際、VLSからはミサイルのエンジンではなくガス圧で射出され、水面に出た瞬間にエンジンが点火されて目標へと飛翔します。
海上艦艇では、フランス海軍のVLSがこの方式を採用しており、射出後、空中でミサイルのエンジンが点火されます。
地上では、旧ソ連・ロシア製の地対空ミサイルシステムがコールドローンチを採用しています。この目的は、ガス圧や火薬で射出することで発射管や操縦者を保護することです。また、ロシアや北朝鮮、中国が保有する車載型の弾道ミサイル発射装置もこの方式が多く使われています。
コールドローンチの大きなメリットの一つが、射出時の音が小さいことです。発射時の隠密性が高まります。また、エンジン点火前にミサイルが発射筒から完全に離れるため、発射トラブルがあっても発射装置への影響を抑えられる利点もあります。ほかにも、水中で艦内に排気ガスが充満するリスクなどを考慮して、潜水艦のミサイル発射にはコールドローンチが使用されています。
反面、ミサイルを射出するための補助装置が必要なため、発射装置の設計や整備が複雑になるというデメリットもあります。
※一部修正しました(6月23日14時10分)
【動画】「スポンッ!」と出た後に点火! これがコールドローンチでの発射です