山手線が深い掘割を進む駒込-田端間の上空に、巨大な橋を架ける工事が進んでいます。これが「山手線最後の踏切」の代替となります。

なんだあれ!? 険しい地形に鉄骨の要塞

 2025年6月現在、山手線では少なくとも3か所で、上空に「新たな橋」を架ける工事が本格化しています。

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山手線の上に構築された作業台(乗りものニュース編集部撮影)

 一つが高輪ゲートウェイ-品川間。これは幹線道路である「環状4号線」の橋で、すでに橋桁が姿を現しています。もう一つは池袋-大塚間で、こちらは老朽化した「西巣鴨橋」の架け替え。これもすでに橋桁が架かっています。

 そしてもう一つが、駒込-田端間です。「あれは橋でも架けているの?」と同行者が指さした車窓を見上げると、崖のような急斜面の上部に鉄骨の要塞のようなものが。これは橋を架けるための作業台で、掘割をゆく山手線の両サイドの擁壁が一番高くなる場所付近に構築されています。

 この橋は、「山手線最後の踏切」の代替となります。つまり、その踏切の廃止が近づいているのです。

 山手線の踏切は、埼京線や湘南新宿ラインが走る貨物線を含めると他にもありますが、旅客線すなわち緑色の山手線電車のルートでは、ここ東京都北区の「第二中里踏切」が唯一の存在となっています。

 遮蔽時間が長く、国土交通省の「改良すべき踏切道」に指定され、対応策が検討されていたところ、近隣で東京都による都市計画道路の事業化が固まってきました。

これを受け、JR東日本と北区は2020年12月、線路をまたぐ橋梁の完成後、踏切を廃止することで合意。JRにとっては、山手線の自動運転化を見据えるなかで、必須条件となっている“踏切ゼロ”を実現するためでもあります。

「最後の踏切」廃止はいつ?

 建設中の橋は都市計画道路「補助第92号線」の橋で、踏切から160mほど東へ進んだところです。これまで南側から続く幅20mほどの道路が、線路でプツリと途切れていました。線路北側では、もとあった遊び場が閉鎖され、バリケードで覆われた工事ヤードのなかで杭打ちが行われていました。

「あれ橋でも架けてるの?」 山手線の崖の上に「鉄骨の要塞」出現!? 廃止近づく「山手線最後の踏切」
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下が山手貨物線、その上を山手線が立体交差。その上空に橋が架けられる(乗りものニュース編集部撮影)

 現場では近隣住民向けに、工事ステップを映像で紹介しています。今後は橋台を構築したのち、2つの橋桁を送り出して架設し、真ん中に横梁を構築して幅20mの橋とします。車道の両側には分離された歩道が設けられる見込みです。

 この場所は、湘南新宿ラインが走るルートである山手貨物線が、旅客線(山手線)の下をくぐって東北本線へ直通する「中里トンネル」の坑口があり、切通しのなかで立体交差が形成されている重要な箇所です。上空の橋が架かれば3層の立体交差になります。

 現地の看板によると、架設工事は2028年7月までの予定。

その後に道路工事を行い、全体の事業期間は2029年度までとされています。

「山手線最後の踏切」は、もしかしたら、あと5年以内に姿を消すかもしれない――そのことを実感できる光景でした。

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