真夏の車内は想像以上の高温となり、スマートフォンやETCカードなどの精密機器にとって過酷な環境になります。そうした機器が対応できる「温度」の上限、ご存知でしょうか。
2025年の夏は早くから気温が高めに推移し、6月中旬には西日本から東日本の広い範囲で、気温が35度を超える「猛暑日」を記録しました。これから酷暑が到来することは確実です。こうした暑さのなかで、熱中症への厳重な警戒が広く呼びかけられます。
直射日光の当たる車内はスマホに厳しい条件。エアコンの冷風をあてると、スマホそのものの冷却にも働く(植村祐介撮影)
ただ暑さは人間だけでなく、「モノ」にとっても辛い環境です。とくに外気よりも格段に高温となるクルマの中に置くモノには、いっそうの注意が必要となります。
まず注意すべきモノの筆頭は“持ち歩く精密機器”である、スマートフォン(スマホ)です。
たとえば「iPhone」は、使用の温度範囲が「0度~35度」、保管の温度範囲が「マイナス20度~45度」とされています。多くのAndroidスマホでも、多少の差異はあるものの、温度についての基準はほぼ同様と考えていいでしょう。
スマホをダッシュボードなどにホルダーで固定し、ナビアプリを使用している姿がしばしば見られますが、直射日光がフロントウインドー越しにスマホにあたるような環境では、このときのスマホの温度が35度を超えることも想定されます。
そうした高温下でスマホを使い続けると、正常に動作しなくなるだけでなく、バッテリーの寿命にも悪影響を与えます。
さらに注意すべきは、エンジンを切った車内へのスマホの放置です。炎天下に車を停め、エンジンを切ると、温度はあっという間に上昇します。
たとえばナビアプリでルート案内の途中にコンビニに立ち寄り、エンジンを切って車を離れた場合、ナビアプリは高温の車内で作動し続けることになり、トラブルの可能性は一段と高くなります。駐車の際はスマホをホルダーから外し、車外に持ち出すことを習慣付けましょう。
また長時間の炎天下での駐車では、保管温度の上限である「45度」を大きく上回ることもしばしばです。この場合は、たとえスマホの電源を切っていても、不具合が発生するおそれがあります。
なおこれらの不具合は、スマホと同様にリチウムイオン電池を搭載するモバイルバッテリーやゲーム機にも起こりえます。十分にご注意ください。
ETCもおかしくなる!?もう一つ、見落とされがちなのが「ETCカード」です。

炎天下の駐車場では、車内が直射日光にさらされる。
ETC車載器は、真夏の車内が高温になることを想定して作られており、動作温度は多くの製品で85度までとされています。
しかしETCカードは車載器よりも高温に弱く、真夏の車内への長時間の放置は、ICチップの不具合につながります。もしICチップに不具合が発生すると、ETC車載器によるカード情報の読み取りができなくなり、ETC通行が不可能になるのです。
このようなスマホなどのリチウムイオン電池内蔵機器や、ETCカードの高温に起因するトラブルを防ぐには、駐車中の車内にそれらを放置しないことが、最大の対策となります。
ただクルマを駐車場に停めての海水浴などで、盗難(置き引き)や紛失のリスクを考え、スマホやETCカードをカギのかかる車内に残しておきたいという人もいるでしょう。
そういう場合には、100円ショップなどで売っている小型の保冷バッグにスマホやETCカードを入れ、保冷剤もしくはコンビニで買える冷凍されたペットボトルドリンクとともに保管しましょう。このとき保冷バッグ内での結露などを考え、スマホやETCカードは「ジッパー付き保存袋」に入れることをお勧めします。
保冷バッグはトランクやリアシートの足下など、直射日光が当たらず、また車外から目に入らないところに置くのが適切です。さらにサンシェードでフロントウインドーを覆うのも、車内温度の上昇を防ぐためには効果的です。
ただこうした保冷剤や冷凍のペットボトルも、その効力は一定時間しか続きません。効力を過信せず、長時間の放置は避けるべきです。
制汗スプレーやペットボトルにも潜む危険電子機器でなくても、うっかり車内に放置して大トラブルになりがちなものの代表格が、制汗スプレーなど高圧のガスを含む製品です。

直射日光の当たる場所にドリンクを置きっぱなしにすると、思わぬ炎上リスクに(画像:PIXTA)
こうした製品を高温下の車内に放置すると、ガスが膨張して容器が破裂するおそれがあります。その威力は想像以上に大きく、飛び散った部品の当たりどころによっては、内装やウインドーにダメージが残ります。
これら高圧ガスを含むスプレーはクルマに残さない、もしくは屋外で使う制汗剤はリキッドタイプを選んだほうがいいでしょう。
最後に、液体の入ったペットボトルの車内放置も禁物です。なぜなら液体の入ったペットボトルが原因で、クルマを失うほどの事故につながる可能性があるからです。
液体の入ったペットボトルは、その形状によっては、通過した直射日光を反対側の一点に集める「収斂」が発生することがあります。その収斂が発生するところに可燃物があれば、容易に車両火災を引き起こしてしまうのです。
真夏のドライブでは、楽しい思い出と帰宅できるよう、こうした準備や対策に十分に気を配ることをおすすめします。