ANAが2027年にパイロット、客室乗務員、旅客係員、整備士などの制服を一新する予定です。それにともない各部門の担当デザイナーが決定しました。
ANA(全日本空輸)は創立75周年を機に、パイロット、客室乗務員(CA)、旅客係員、整備士などの制服を一新します。新制服の披露は2027年12月を予定し、すでに担当するデザイナーが発表されています。コンセプト・デザイン等はこれから追って公開されることになりそうですが、各デザイナーは実際に現場を視察し、社員の生の声を直接聞く段階に入っているとのことです。それぞれ、どのように新制服を考案するのでしょうか。
ANA機とANAの社員(乗りものニュース編集部撮影)。
デザイナーは3者が部門に分かれて担当する形式が採用されました。
運航部門(パイロット)の制服デザインは、数多くの企業制服や皇室衣装を手がけた滝沢直己氏が担当します。接遇部門(CA・旅客係員)の制服デザインは桑田悟史氏が、そして、機能部門(整備士やグランドハンドリングスタッフなど)の制服デザインは、スポーツ用品を手がけるadidas(アディダス)社が担当します。
報道陣からの質問に対し、3部門の担当者は次のように答えています。
●運航部門の滝沢氏
飛行機に関わるユニフォームのデザインは、昔からの憧れでした。また、ANAはよく利用する航空会社ですので、お話をいただいた時は本当に嬉しく、運命的なものを感じました。
パイロットの制服において素材のイノベーションができるかなという風には思います。長時間着用してもストレスが少ないよう、ストレッチ性、通気性、軽量性などを追求し、まるでスポーツウェアを着ているような感覚の制服が作れると考えています。しかし、ユニフォームは実際に着用してテストする期間が非常に重要です。特にパイロットであれば、狭いコックピットでの動作など、実際の環境でテストすることに時間をかける必要があります。
トレンドに関しては、今フレッシュに見えるものも、いつかは必ず古くなります。長く着ていただく以上、その時々の流行を追うのではなく、普遍的なものとどう融合させるか、そこのさじ加減がデザイナーの腕の見せ所だと思っています。
CA・旅客係員の新制服はどうなる?●接遇部門の桑田氏
このお話をいただいた時、まず家族や自分のチームが喜んでくれるだろうなと思ったのが一番嬉しかったです。
客室乗務員や旅客係員は、接客業である前に「お客様の命を守る」という大事な役割があります。また、旅行中のお客様のストレスを和らげる存在でもあります。ですので、まずはスタッフの方々が快適に着用できるという点を第一にして考え、そこからデザインを構築していきたいと考えています。
また、CAと旅客係員では、業務内容が全く異なります。デザイン以上に、まずは機能性を突き詰めることが重要だと考えています。
例えばCAの場合、長距離路線では制服のまま休むこともあると聞きます。その際にベルトのデザインはどうあるべきか、といった細かい点まで配慮が必要です。旅客係員の場合、小柄な方が大きなスーツケースを扱うシーンもよく見るので、どうすれば綺麗に見えるかなどを想像しながら、ワクワクしてデザインをし始めています。現在工房で、理想的なシルエットのベースとなる「ブロック」(※衣服の基本となる型紙)の提案をちょうど始めたところです。
トレンドについては、私も特に意識しているわけではありません。本当に良いもの、長く着ていただいても飽きないものを作ることが目標です。「コカ・コーラ」の味のように、クラシックでありながら普遍的な価値を持つもの。着るたびにワクワクする、会社に行くのが楽しみになる、そんな制服を目指したいです。
「アディダスの整備士制服」スポーツメーカーの知見をどう活かす?●機能部門のアディダスジャパン・萩尾孝平社長

ANA新制服の開発メンバー。左から桑田悟史氏、ANA井上慎一社長、滝沢直己氏、アディダスジャパン・萩尾孝平社長(乗りものニュース編集部撮影)。
弊社の社員はドイツ本社への出張などでANA様をよく利用させていただいており、人と人とを繋いでくれる存在として非常に思い入れが深いです。
私たちが製品を開発する際は、まずアスリートやユーザーのニーズを徹底的に調査し、理解することから始めます。
暑さ対策は、スポーツの現場においても非常に重要な課題です。特に日本の夏の暑さは、世界のアスリートを悩ませる要因の一つです。私たちには日本に開発チームがあり、特にこの暑さ対策において研究や素材開発を進めています。はっきりとしたことはまだ言えませんが、そこで培った知見やカッティングの工夫などを、今回のユニフォーム開発にも存分に取り入れていきたいと考えています。
デザインについては、クリエイティブディレクター主導のもと、ANAの皆様と私たちが共に共感できるコンセプトをしっかりと作り、そのコンセプトのもとで普遍的なデザインを生み出せればと考えています。
ただし、私たちが担当する部門のユニフォームは、絶対に安全を担保しなければいけないというところがあります。弊社として未経験の領域でもありますので、その部分のテストには十分な時間をかけたいと考えています。
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なお、ANAの井上慎一社長によると、CA・旅客係員の制服は約12年ぶり、パイロットは37年ぶり、整備士に至っては39年ぶりの刷新となるとのことです。