名古屋市のスタートアップ企業が「段ボールで作った軍用ドローン」を実用化させようとしています。どのようなものなのでしょうか。
2022年2月から今なお続くロシアによるウクライナ侵攻では、様々な小型ドローンが爆弾を搭載して使われました。この現実を受けて日本でも有事を視野に、安価に、かつ短期間で製作できる小型自爆ドローンを持とうという動きが起きています。材料は日常で使われる段ボール紙。「ORIGAMI Drone(折り紙ドローン)」と名付けられ、実用化に向けて動きを見せています。
エアカムイ150(画像:エアカムイ)。
その「メイド・イン・ジャパン」の自爆ドローンは見た目も実際に触ってみても段ボール紙そのものです。全長は約1.7m、横幅は1.8mの機体は両手で軽々と持ち上げることができるほどで、主翼の前縁も段ボール紙らしく丸みを帯びるというよりも角々しさが目立ちます。
この「ORIGAMI Drone」を作成し、2025年6月にパリで開かれた世界最大級の航空ショーで展示したのは愛知県名古屋市のスタートアップ企業「エアカムイ(Airkamuy)」です。2022年8月に会社を立ち上げた当初は、山岳救難用の捜索ドローンの開発を目指していたといいますが、需要を探っていくうちにウクライナ侵攻が起きたことも合わせて、自爆ドローンの開発を手掛けるようになったとことでした。
会場に置かれたパンフレットに記された自爆ドローン「エアカムイ150」の滞空時間は1~2時間半ほどで飛行距離は約150km。速度は時速45~120kmを出すことができるといいます。飛行は手投げにより行われますが、重さは4kg程度なので苦になりません。
エアカムイ150は有事の際に自爆ドローンとなりますが、平時は自衛隊の対ドローン訓練にも有効活用出来るとしています。その理由は制作費の安さにあります。段ボール紙というどこでも見つけることができる材料故に、同じ大きさの既存のドローンの10分の1のコストでつくることができるということです。
そのため、スウォームと呼ばれる多数のドローンによる一斉攻撃に備えた訓練を安く行うことも可能になり、これも有事の日本を守る、支えのひとつになるでしょう。
エアカムイによると、現在の課題は組み立て時間の短縮と、顧客の要望に応じた制御インターフェースの柔軟な構築を図ることとのことです。また、尾翼をV字型にするかなど設計の最終形態も探っている状態ともしています。ロシアに侵攻されたウクライナの現状を見れば、こうした小型自爆ドローンの製作基盤が日本でも必要と思いますが、筆者は今回の取材で、ハッと気付かされたポイントがありました。
ドローンを開発した目的を聞いた際、エアカムイ側は「自爆用です」と率直に回答したのです。同じ海外の航空ショーでも10年以上前は、日本人が「日本発の自爆ドローンです」とは中々言い出せないものでした。ロシアによるウクライナ侵攻を遠い西の出来事とせず、東に位置する日本が現実と受け止めて安全保障への意識を変化させているのは確かです。