海外では「ブルーインパルス」も使うT-4練習機の後継機に、ユニークな設計を持つ航空機が候補になるかもしれないと報じられています。どういったものなのでしょうか。
航空自衛隊の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」も使うT-4練習機の後継機はどのような開発形態になり、どの機種が選定されるのか――。今ひとつハッキリとなっていない中、とあるベンチャー企業が手掛けるユニークな航空機も、候補のひとつに入るかもしれません。
T-4練習機を装備した現在の「ブルーインパルス」(画像:航空自衛隊)。
T-4練習機の後継については、2024年4月の日米首脳会談で共同開発・生産の方向性が確認されている一方で、イタリア・レオナルドが後継機にM-346を売り込むなど、賑やかになりつつあります。そのようななか一部の海外メディアが候補機として報じているのが、英国のスタートアップ企業アエラリスの「モジュラージェット」をベースとする練習機です。
同社の「モジュラージェット」は用途に応じて最適化されたパーツを付け替えることで、様々な任務に使用できるというコンセプトを持つ機体です。航空機は構造によって既にモジュール式を採用している中、アエラリスはこれを大胆に推し進め、コア(中核)となる前部胴体や操縦室、主翼、ジェット・エンジン取り付け部などをモジュール式にしています。
この方式を採用することによるメリットは運用コストで、同社は従来比で3割、コストを減らすことができると主張しています。
T-4後継機が、同社のモジュール式ジェット練習機になるかもしれないという報道は、GCAP(次期戦闘機)による日英関係の深化を見越しているようですが、まずは曲技飛行チームの「レッド・アローズ(イギリス)」と「パトルイユ・ド・フランス」の後継機を狙っていると報じるメディアもあります。それを示すのが、2025年2月のフランス国内でのアエラリスの子会社設立です。同国内では「新興企業がコミットメント(結果を約束する)を示した」と評価されてもいます。
「モジュラー式航空機」最新の状況は?とはいえ、開発自体がどれほど進んでいるか今のところ明らかになっておらず、当初2025年とした初飛行も行われていない模様です。

「モジュラーエアクラフト」のイメージCG(画像:AERALIS)。
もっとも、世界最大級の航空ショーでも、自社のアピール戦略に合致しなければ展示を見送る例はいくらでもあります。アメリカの超音速旅客機「オーバチュア」を手掛けるブームも今回は展示を見送っているので、現時点でアエラリスへネガティブな評価を下すことは避けねばなりません。
T-4後継機は、GCAPやF-35のパイロットを養成するために、操縦技術に留まらない高度な機器操作能力を操縦学生が容易に習得できるようにしなければなりません。それだけに、どのような機体が採用されるのか、さらに開発で培われた技術が将来の日本の航空機産業へどのように寄与するかが求められるでしょう。そこにスタートアップ企業が“刺客”となり得るのかが注目されます。