SL列車の新たな牽引車両として、新型の電気式気動車GV-E197系が営業運転を開始しました。デビュー初日は、SLの不具合により途中駅で運転打ち切りになりましたが、2日目は予定区間を完走しました。

初日はいきなり途中駅で運転打ち切り

 2025年7月19日、JR東日本の高崎地区で運転されているSL列車の新たな牽引(けんいん)車両として、GV-E197系が営業運転を開始しました。

「おいSL動いてないぞ」 まさかの“SL列車まるごと牽引”で...の画像はこちら >>

「SL・GVぐんま横川」に連結されたGV-E197系(柴田東吾撮影)

 列車名は「SL・GVぐんま横川」と「GV・SLぐんま横川」です。GV-E197が営業運転を始める前は「SLぐんまよこかわ」「ELぐんまよこかわ」「DLぐんまよこかわ」などの列車名で運転されていました。今回、電気機関車やディーゼル機関車に代わって新たにGV-E197が使用されるようになったのです。

 ところが運転開始当日は、途中で運転打ち切りに。結局、予定していた区間で運転が行われたのは、2日目の7月20日のことでした。ここでは「SL・GVぐんま横川」として高崎駅に戻ってきた2日目の様子をリポートします。

 今回、営業運転を開始したGV-E197系は、2021年に砕石輸送気動車として登場しました。エンジンで発電した電力で走る電気式気動車です。線路の下に敷かれている砕石(バラスト)を運びます。このほか、電車などと連結して車両基地内での入換、車両工場(JR東日本の総合車両センター)に出入りする車両の牽引・救援を行う機能も持たせています。

 GV-E197系は列車の両端に連結するGV-E197と、編成の中間に連結するGV-E196で構成され、GV-E197にエンジンを搭載しています。

砕石輸送の際はGV-E196に砕石を積み、両端のGV-E197が列車を押したり引いたりする形で運転されています。

「GV ・SLぐんま横川」「SL・GVぐんま横川」は、このGV-E197の機能を活用し、砕石を積む車両の代わりにSLや客車を連結して走ります。

 GV-E197は、ブレーキの仕組みが客車やSLと異なりますが、一本の列車として走れるよう、信号変換のような「読み替え」を行うことで連結して運転できるようになっています。また、「被牽引」の機能としてSLからのブレーキがGV-E197にも働く仕組みがありますが、この仕組みを備えたGV-E197は2両だけで、GV-E197形200番代(TS08編成)として区別されています。

 今回初めて「SL・GVぐんま横川」として営業運転を行いましたが、7月21日には「SL・GVぐんま桐生」と「GV・SLぐんま桐生」が運転される予定でした。

 ところが初日の7月19日、横川行き「GV・SLぐんま横川」が高崎を出発した際、SLのD51形の動輪を引きずったまま走ってしまいました。このため、途中の安中で運転が打ち切りとなり、高崎行きの「SL・GVぐんま横川」は運休しています。

 翌7月20日にはSLをC61形に交代して「GV・SLぐんま横川」「SL・GVぐんま横川」が同じ区間で運転されましたが、両毛線の「SL・GVぐんま桐生」と「GV・SLぐんま桐生」はD51形が引き続き不具合のため、運休となっています。

3つの行き先がある高崎のSL

 高崎地区で運転されているSL列車は、上越線・信越線・両毛線の3方面で運転されています。上越線では「SLぐんま水上」として、通常はSL+客車で運転されていますが、補機(補助機関車)が連結されることもあります。

 信越線方面では「GV・SLぐんま横川」「SL・GVぐんま横川」として運転されていますが、GV-E197が営業運転に就く前は先の通り「SLぐんまよこかわ」などの列車名でした。

 両毛線方面の運転は珍しく、今回運休となってしまった列車名は「SL・GVぐんま桐生」と「GV・SLぐんま桐生」でしたが、それ以前では「SLレトロぐんま桐生」「ELレトロぐんま桐生」などの列車名でした。

ちなみに、旧型の客車が使用される際は列車名に「レトロ」が加わります。

「SLぐんま水上」では折り返し駅の水上駅に転車台があり、SLの向きを変えられます。しかし、「GV・SLぐんま横川」や「SL・GVぐんま桐生」などは、折り返し駅となる横川駅や桐生駅に転車台がありません。このため、SLが列車の先頭につくのは片道だけ。もう片方の運転では、GV-E197が列車の先頭に連結されて走ります。

 7月20日に運転された高崎行きの「SL・GVぐんま横川」は、D51形に代わりC61形が先頭に立ち、12系客車3両を挟みGV-E197が後ろに2両つながっています。

 高崎駅では猛暑のなか、大勢の人々が「SL・GVぐんま横川」の到着を見守っていました。高崎駅では駅係員に「SL・GVぐんま横川」が到着するホームを尋ねている人も見受けられました。

 8番線に「SL・GVぐんま横川」が到着すると、列車の前後で大勢の人々が写真や動画を撮影する光景が見られました。この列車ではSLが先頭に立つためか、GV-E197よりもSLのC61形を見守る人の数が圧倒していました。

 しばらくすると「SL・GVぐんま横川」だった列車は、大勢の人に見守られつつ、高崎駅の南側にある留置線に引き上げて行きました。

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