日本郵船が運航する自動車船の見学会に参加。当日は新しい外航クルーズ船「飛鳥III」も接岸し、市民が大小さまざまな船を楽しむなか、自動車船の見学も賑わいました。

「飛鳥III」と並んだ自動車船見学会

 横浜港・大さん橋国際客船ターミナルなどで開催された「海洋都市横浜うみ博2025」の一環として2025年7月12日、日本郵船が運航する自動車船「PLEIADES LEADER」(6万2994総トン)の見学会が開催されました。当日は郵船クルーズの新しい外航クルーズ船「飛鳥III」が接岸していたほか、関東地方整備局の清掃兼油回収船「べいくりん」や横浜市消防局の消防艇「まもり」などが公開され、大小さまざまな船を楽しむ市民で賑わっていました。

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大さん橋に接岸した自動車船「PLEIADES LEADER」(深水千翔撮影)

 日本郵船横浜支店の前田君丈支店長代理は「自動車船は毎日、街中で走っているような車を積んで、日本の経済のため海外に向けて運んでいるということで、市民の方にはイメージが付きやすい船だと思う。こうして船に来ていただけるのは大変嬉しい」と話していました。

12階建ての立体駐車場のような構造

 今回、公開された「PLEIADES LEADER」は2009年11月に新来島豊橋造船で竣工しました。全長は199.94mで全幅は32.26m、船底からアンテナ最上部までの高さは52.6mです。乗組員は24人で、船長はルーマニア人、航海士や機関士などはフィリピン人やインドネシア人といった多様な国籍のクルーで構成されています。

 貨物デッキは12階建ての立体駐車場のような構造をしており、普通車換算で6430台を積載可能。商品である自動車が自走でそのまま船内に乗り入れられるよう右舷側の中央部と船尾側にランプウェイが設けられており、「ギャング」と呼ばれる専門の作業員によって荷役が行われます。

 荷役作業時の走行スピードは20km/h、走行間隔は15mと決まっており、一番多く載せる自動車は前後30cm、左右10cmというわずかな間隔で並べられていきます。デッキに積み付けられた車両は、航海中の揺れによる移動を防ぐため、ラッシングベルトによって固縛されます。

「PLEIADES LEADER」は乗用車だけでなく、大型ヘリコプターや建設機械、鉄道車両などのような重量物や背の高い貨物の輸送にも対応しており、種類や高さに応じてデッキを使い分けます。

天井の高さを変えられるのは12層あるデッキのうち2層で、ランプウェイから直接入れる5デッキは特に重量物を積み込めるような設計が施されています。

実はかなり“頭脳戦”な自動車輸送

 異なる種類の貨物を効率的かつ安全に積み付けるためには、寄港地ごとの車両の積み下ろし順序や、船体のバランスを考慮しなくてはなりません。

この船に「クルマ6430台」どーやって積むの!? 「飛鳥III」と並んだ「日本郵船の自動車船」に潜入 もはや神業の積み込み
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「PLEIADES LEADER」の甲板から「飛鳥III」を見る(深水千翔撮影)

 完成車輸送は日本発だけでなく、アジアの工場や海外メーカーから出荷された自動車も含まれるうえ、海外の港間で中古車を運ぶということもあります。欧州発では重量物も多く、顧客のニーズに応えつつ、目的地までスケジュール通り安全に商品を運ぶためには、貨物や航路の特性を把握することはもちろん、陸上社員と船員の緊密な連携が不可欠です。

見学者数は昨年の倍以上に

 横浜港の主力輸出品目である完成自動車を取り扱う大黒埠頭は、大型自動車船11隻が同時に着岸可能な「東日本最大の自動車取扱拠点」です。近年では電気自動車(EV)など環境対応車の輸出入拠点として横浜市が機能強化に取り組んできました。近くを通ると日本郵船などの自動車船が荷役している姿を見ることができるでしょう。

「大さん橋で自動車船の見学会を行うようになってから10年になる。私が乗り組んでいたのはLNG(液化天然ガス)船だったので、一般の人が入れない区域で貨物を上げて、アメリカに戻ったり、オーストラリアに戻ったりしていたが、自動車船は大黒埠頭など市民に近いところに接岸している身近な船だと思う」(前田支店長代理)

 今年の「うみ博」で「PLEIADES LEADER」を見学した人数は約1500人。昨年が約700人だったので、倍以上の人数が乗船したことになります。これは全てのエリアを見学できるプランに加えて、船橋を回らないコースを約700人分用意したためで、これにより多くの人が船内見学を体験できるようになりました。

 前田支店長代理は「PLEIADES LEADER」が新造船の「飛鳥III」と並んだことについて触れ、「私が入社した頃はブイ係留で貨物船がたくさん入っていた。

大さん橋から『二引』のファンネルを数多く見られた時代から一転してしまってたが、またこうやって『二引』のファンネルが並ぶ光景が戻ってきたのは非常に嬉しかった」と話していました。

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