オーストラリアは2025年8月5日、次期フリゲートに「日の丸護衛艦の能力向上型」が選ばれました。そこで三菱重工の最高財務責任者にハナシを聞いたら、課題と展望について答えてくれました。
オーストラリア国防省は2025年8月5日、同国海軍の次期汎用フリゲートに、もがみ型護衛艦の能力向上型(新型FFM)を選定したと発表しました。
もがみ型護衛艦の能力向上型、令和6年度型護衛艦(4800トン型)のイメージCG(画像:三菱重工)。
これを受け、三菱重工業の西尾浩CFO(最高財務責任者)は同日開かれた決算発表の会見で「まだ受注したわけではない」と前置きしたうえで、「契約に向けて日本政府や関係者と連携してしっかり取り組んでいきたい」と話していました。
オーストラリア海軍は現用のアンザック級フリゲートが老朽化したため、その後継艦の調達を計画。整備規模は計11隻で最大100億豪ドル(日本円で約1兆円)が投じられるとしています。
これに対し、日本政府は新型FFMをベースとした艦艇の共同開発・生産を提案し、過去最大規模となる防衛装備品の輸出を実現するため官民あげて活動してきました。調達プロセスが順調に進めば2026年に建造契約が結ばれたのち、2029年に1隻目が引き渡され、2030年に就役する見込みです。建造ヤードについては「基本的には長崎造船所ということになるのではないか」(西尾CFO)としています。
西尾CFOは「ここに至るまで一緒に取り組んできた日本政府や関係企業の方々にまずは感謝を申し上げたい」と話しつつ、「1隻目の契約納期が2029年度なので、そこに向けて建造するため、時間軸としては2026年から2029年にかけて徐々に売り上げが立っていく。本件を成約して実際に建造するということになれば、非常に大きな防衛装備品の移転ということになる。当社は元々、海外での事業はすでに経験があるので、その辺を生かしてできる限りの貢献をしていきたい」と述べました。
4800トン型護衛艦はすでに5隻発注済みなお、実際に契約となった場合、海上自衛隊向けの新型FFMなどと並行して建造するものの「船台のリソースがオーストラリアに割かれるというような心配はない」との見解を、三菱重工では示しています。

オーストラリアに提案されていた改もがみ型フリゲートのイメージCG(画像:オーストラリア国防省)。
オーストラリアの次期汎用フリゲートのプロジェクトでは、日本で建造するのは3隻目までで、4番艦以降はオーストラリア国内で建造することになりますが、この辺りについては「まだこれから詰める」との回答でした。一方で、「日本で建造したフリゲートの修繕をオーストラリアでやることを1番に考えている。現地の企業とは、その辺りに向けてコミュニケーションを始めているところだ」とも話していました。
また、装備品の輸出については「今回も契約者は三菱重工になるかと思うが、基本的に日本政府と共同で動いていく。日本の安全保障の方針に従って同盟国や同志国と一緒にやることになるため、当社単独の判断で装備品の輸出・移転をすることはない」と明言しています。
海上自衛隊向けの新型FFMは「4800トン型護衛艦」として調達が進められており、防衛省の2025年度予算では3番艦から5番艦までの建造が決まっています。同艦は三菱重工を主契約者、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)を下請負者に計12隻が整備される予定です。