グローバル・ストライク・コマンド(AFGSC)の事故調査委員会(AIB)は2025年8月5日、2022年12月10日に発生したB-2「スピリット」の事故に関する調査表を公表しました。
同じ重さの金塊よりも高い爆撃機アメリカ空軍グローバル・ストライク・コマンド(AFGSC)の事故調査委員会(AIB)は2025年8月5日、ミズーリ州ホワイトマン空軍基地で2022年12月10日に発生したB-2「スピリット」の事故に関する調査報告書を公表しました。
B-2「スピリット」戦略爆撃機(画像:アメリカ空軍)
この事故は、B-2の最終着陸進入時に主脚に関連する油圧システムが故障。乗員はただちに緊急事態を宣言し、非常用の着陸装置展開手順で着陸しましたが、直後に左主脚が破損。左翼が滑走路に接触して数メートル引きずられた後、火災が発生しました。
調査の結果、左主脚の破損原因は、着陸装置(ランディングギア)の展開・格納時の動作シーケンスを制御する油圧バルブである「トラックポジションシーケンスバルブ」の故障によって、左主脚のロックリンクアセンブリ(脚が完全に伸びてロックされる機構)が正常に機能せず、所定の位置に固定されなかったことと報告されています。
主脚の故障により、事故機体は左翼を引きずったまま滑走路から逸れ、約2.7km先の草地で停止し、炎上しました。火災は左側のサージ燃料タンクから漏れた燃料が引火して拡大し、同タンクが爆発。さらに左側外翼燃料タンクにも延焼し、こちらも爆発したことが原因とされています。
事故調査を終えたAIBは、主脚の設計上の脆弱性に加え、泡消火剤(AFFF)の適用が遅れたことで消火活動に時間を要し、機体損傷が拡大した点を改善すべき課題として指摘しています。
なお、この事故による死傷者はいませんでしたが、左翼および左主脚の損害は3億ドル(約440億円)以上と見積もられています。
航空機の左翼損傷額としては桁違いの高さですが、これはステルス能力を有する戦略爆撃機B-2の高価な機体であることが主な要因です。同機は1990年代の調達コストが約22億ドル(約3200億円)とされ、「同じ重さの金塊よりも高価な爆撃機」として話題になりました。