青森県にある三沢市は「基地の町」として有名です。ところが同市は、こうしたイメージとは全く異なる“顔”をもっているのです。
青森県にある三沢市は基地の町として有名です。ここに所在する三沢基地は、太平洋戦争終結直後の1945年からアメリカ軍が駐留し、現在でも日本の航空自衛隊と共同運用されています。ところが同市は、こうしたイメージとは全く異なる“顔”をもっているのです。
三沢基地で行われた日米共同の「エレファントウォーク」の様子(画像:アメリカ空軍)。
三沢基地内にはアメリカ軍関係者とその家族が約1万人も住み、三沢市内にも外国人住民登録者が約2000人もいるそうです。これら外国人が利用する商店や施設などが市内にはあり、三沢基地の存在と合わさって、三沢市にアメリカ文化のイメージを印象付けています。
日本の中の外国といった感じの三沢ですが、市内には日本特有の施設が数多くあり、それを観光名所として積極的に売り出しています。その施設とは「温泉」です。
じつは三沢市内には10か所もの温泉施設があり、そのすべての施設が個別に自家源泉を持っている天然温泉なのです。さらに驚くべきことは、多くの温泉の入浴料は500円前後という大変安い価格で利用できるので、三沢市に来れば銭湯感覚で温泉に入ることができ、異なる泉質を楽しむためにハシゴして回ることもできます。
しかし、なぜ三沢市内にこれだけ温泉が多く存在し、観光資源としも活用されているのでしょうか。
なんと青森県は「人口1人あたりの温泉公衆浴場数」で全国1位であり、三沢市だけでなく弘前市、青森市などにも温泉銭湯施設が充実しています。

「風呂道具 IN CAR ステッカー」。青森県が銭湯PRの為に製作し、現在は青森県内の銭湯施設などで販売されている(布留川 司撮影)。
このため、観光客だけでなく地元民の利用も多く、日常的に銭湯感覚でこれら温泉を利用しているようです。
NTT タウンページ株式会社が2022年発表した統計によると、青森県民の「温泉・銭湯入浴料」の年間支出金額は平均で5392円(2020年度)で、全国平均の1243円を大きく引き離して全国トップとなっています。
三沢市の温泉施設のほとんどは500円程度の入浴料で利用することができます。しかし、注意も必要です。その安さのためなのか、一部施設を除きお風呂内にはシャンプー・ボディーソープなど洗浄用品やタオル類は常備されておらず、持ち込みか別料金が必要です。そのため、地元民は利用料を安く抑えるために、これらお風呂道具を自ら持っていきます。これら事前準備に関しても銭湯ぽいといえます。
地元の人は車に常に風呂道具を積みっぱなしにする人も多く、青森県では温泉のPRも兼ねて「風呂道具 IN CAR ステッカー」という車用ステッカーまで制作しています(ステッカーは三沢市内の一部の温泉施設でも購入可能)。
9月21日には三沢基地において航空祭が開催され、この地に遠征する人も多いでしょう。自衛隊や米軍の航空機やそのカルチャーに触れられる貴重な機会ですが、その前後に同市の地元民に古くから根付いている、温泉文化も一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。