米国議会調査局(CRS)は2025年8月6日付で、アメリカ海軍が開発を進めている次世代多任務駆逐艦「DDG(X)」に関する最新のレポートを公表しました。
【画像】本当に後継艦になれるのか!? これが、DDG(X)です
DDG(X)は、いわゆるイージス艦といわれる現行のアーレイ・バーク級駆逐艦(DDG-51)およびタイコンデロガ級巡洋艦の後継艦として設計されており、初号艦の就役は2030年代初頭を目指しています。
今回の報告では、設計に関する複数の新情報が明らかになりました。中でも注目されるのは、排水量が1万4500トンへと増加した点です。これは2024年時点の設計より1,000トンの増加で、現行のアーレイ・バーク級(約9700トン)に比べおよそ4800トン重い設計となっています。
さらに、2024年8月には海軍上層部および艦隊からの要望を受け、運用要件に変更が加えられました。これにより、レーザー兵器やレールガンといった高出力兵器の将来的な搭載に対応するため、電力供給能力および速度性能が強化されています。
また、議会予算局(CBO)が2025年1月に発表した試算によれば、DDG(X)の平均建造コストは1隻あたり44億ドル(約6380億円)に達し、海軍の見積もりである約33億ドル(約4785億円)より33%高いという結果が示されました。この大幅な乖離は、今後の予算審議にも影響を及ぼす可能性があります。
排水量の増加や要件変更、コスト見積もりの差異、設計上の技術リスクなどを受け、議会や海軍内外では過去に頓挫した後継艦計画同様、アーレイ・バーク級のさらなるアップグレードによる延命策を再検討すべきだという声がまたもや上がっています。
現在建造されているアーレイ・バーク級フライトIIIは、最新のSPY-6レーダーや電力強化システムを搭載可能であり、設計の限界は近いものの、未だ一定の拡張性を保っています。既に70隻以上が建造された実績も相まって、1隻あたりの建造コストがDDG(X)の半分程度で済むという経済性も、今後の艦隊構成を左右する要因となるでしょう。