ノルウェー軍艦の来日は史上初めて

 ノルウェー海軍のフリゲート艦「ロアール・アムンセン」が2025年8月12日朝、海上自衛隊横須賀基地に接岸しました。

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 ノルウェー海軍艦艇が日本に寄港するのは今回が初めてで、横須賀基地ではノルウェー大使館のクリスティン・イグルム駐日大使や横須賀地方総監の真殿知彦海将らが出席して歓迎式典が開かれました。

「ロアール・アムンセン」は、イギリス空母「プリンス・オブ・ウェールズ」を中心とした空母打撃群(CSG25)の一員として、イギリス駆逐艦「ドーントレス」と共に横須賀基地に寄港しました。

 ノルウェーは世界有数の海洋国家としてインド太平洋地域の情勢が同国の安全保障に影響を受けるとしており、英空母打撃群の遠征「ハイマスト作戦」に参加することで、海洋法をはじめとした国際法を順守し、地域や世界の安全保障の維持に対してコミットメントする姿勢を示していくとしています。

 艦長のロジャー・レルヴィック中佐は入港時に「日本に初めて来たノルウェー軍艦の指揮官として、本日この場に立つことができて大変光栄である」とコメントしていました。

 また、クリスティン・イグルム大使も「イギリスは、ヨーロッパにおけるノルウェーの最も親密かつ重要な同盟国だ」と強調します。

 あわせて大使は、「私たちは不確実な時代に多くの安全保障上の課題に直面している。(我が国は)イギリスと肩を並べて経験を積んでいこうと考えており、今回のインド太平洋地域への展開は、両国間の安全保障と防衛協力への投資だと捉えている」と話し、「日本はこの地域の同志国であり、価値観を共有するパートナーだ。CSG25はイギリスとノルウェーの両国が、この地域の理解を深めるとともに、日本との関係を強化する大きな可能性を提供している」と述べていました。

「ロアール・アムンセン」は、フリチョフ・ナンセン級フリゲートの2番艦で、艦名は世界で初めて南極点に到達した探検家「ロアール・アムンセン」に由来しています。

 竣工したのは2007年5月で、満載排水量は5290トン、全長は132.0m。特徴的なのは日本のまや型護衛艦やアメリカのアーレイバーク級駆逐艦とはまた違う、多面体のダイスのような形状をした艦橋上の構造物です。

海自まや型護衛艦や米軍アーレイバーク級駆逐艦との共通点も

 フリチョフ・ナンセン級のベースとなったのはスペインのイージス艦であるアルバロ・デ・バサン級フリゲートで、同艦は艦橋の上にイージス・システムを構成するフェイズドアレイ・レーダーを4面に貼り付けたパゴダ状の構造物を設けています。同様の配置はオーストラリアのホバート級駆逐艦でも見られますが、これらより船体が小型でありながらイージス・システムを搭載するフリチョフ・ナンセン級ではさらに独特な形となりました。

初の来日! ノルウェーの「虎の子」フリゲート 海自イージス艦...の画像はこちら >>

イギリス駆逐艦「ドーントレス」(左)とノルウェー・フリゲート「ロアール・アムンセン」をバックに記念写真に収まるイギリスとノルウェーの乗員および駐日大使や駐在武官(深水千翔撮影)。

 搭載するフェイズドアレイ・レーダーは、他国のまや型やアーレイバーク級、アルバロ・デ・バサン級などが用いる「SPY-1D」を簡略化した「SPY-1F」多機能レーダーです。これは、ロッキード・マーティンがコルベットから空母まで、どんな艦艇にも幅広く対応できる高性能なレーダーシステムとして開発したものです。

 ゆえに、採用されているシステムは簡易型の「イージスIWS(統合兵器システム)」で、8セルあるVLS(垂直発射装置)からは32発の「シースパローESSM(発展型シースパロー)」を発射します。このほかノルウェー国産であるNSM対艦ミサイルの4連装発射機2基や、オート・メララの62口径76mmスーパー・ラピッド砲1基などを備えています。

 日米のイージス艦を見慣れていると、同じイージス・システムを搭載した軍艦だとはパっと見、思えないかもしれません。しかし、じつは正当なイージス艦の一種なのです。

 また、ノルウェー海軍には2025年8月現在、長距離航海が可能な軍艦は、この「ロアール・アムンセン」が属するフリチョフ・ナンセン級フリゲート、4隻しかありません。いうなれば、ノルウェー海軍の「虎の子」的存在ともいえる艦を1隻、空母打撃群に参加させて日本へと派遣したのですから、ノルウェーも東アジアの安全保障をいかに注視しているのか、その本気度もわかると言えるでしょう。

「ロアール・アムンセン」は8月19日から22日にかけて東京港に寄港する予定です。史上初めて来日したノルウェー軍艦を見るなら今のうちと言えそうです。

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