高速道路で、大型トラックが車線を塞ぎ横並びで走行する――そうした光景をしばしば目にします。片側2車線の高速道路はもちろん、3車線の高速道路でこうなると、後続車はたまったものではありません。
【トラックは左車線“指定解除”!?】これが「新東名で実施中の実証実験」です(画像)
普通車(軽や小型車など)と大型トラック(大型貨物自動車など)では、高速道路における最高速度が異なります。長らく普通車は一部区間を除き100km/hですが、大型トラックは80km/hでした。
近年は新東名などで普通車の最高速度が120km/hまで引き上げられた区間があるほか、大型トラックの最高速度も90km/hまで引き上げられました(トレーラーは80km/hで据え置き)。他方、大型トラックには事故抑止の観点からスピードリミッター(速度抑制装置)の取り付けが義務付けられており、90km/h以上のスピードが物理的に出せなくなっています。最高速度の引き上げ後も、このリミッター速度は変わっていません。
しかし、実際には会社ごとに走行速度、リミッター速度もルール化しているケースもあり、走行速度は車両ごとに異なりますし、勾配などでも大きな影響を受けます。
トラックは普通車のような急発進、急減速は苦手で、ドライバーは一定の速度を維持するように走る傾向があるとされます。このため、一定のペースを保つために、追い越しをかけることがあるといいます。その際、余裕をもって早めに追い越し車線に移り、結果として車線をふさぐケースが長くなる場合もあるようです。
とはいえ、全日本トラック協会による研修テキストでは、不要不急の車線変更をしない、追い越し後は速やかに走行車線へ戻ることを明記しています。追越車線を延々と走るのは、大型車であっても小型車であっても違反です。
大型車の最高速度引き上げは、トラックドライバーの残業時間の上限規制が始まったいわゆる「2024年問題」への対応の一環です。配送時間を短縮し、ひいては輸送の効率化や労働時間の短縮につなげる狙いとされています。
かなり長い車列ができている(乗りものニュース編集部撮影)。
他方で、追い越しをする車両と追い越される車両との速度差が小さくなり、追い越し時の並走時間が長くなる可能性が、引き上げ以前から指摘されていました。
たとえば、追い越す車両との速度差が2km/hしかない場合、前後80mの車間距離(計160m)を確保して追い越しを終了するまでに、計算上は約4分48秒もかかります。速度差が縮まったこともあるのか、以前より“横並び”の時間が長くなったと感じる人もいるようです。
その一方で、最高速度の90km/h以上への引き上げや、リミッター速度の引き上げには、安全の観点などから懸念が大きく、車両性能も問われることから「現時点では現実的でない」と警察庁の委員会で結論付けられています。
ちなみに、大型トラックは原則として高速道路では第一走行車線(最も左の車線)を走行しなければならず、追い越しのために右車線へ出ても、すぐ左車線へ戻らなければなりません。さらに、第一走行車線を走るよう指定する「大型貨物自動車等通行帯」の標識があれば、大型トラックが第三車線(追越車線)を走るのは追い越しの場合であっても違反になります。
ただし、この規制が時間帯によって解除されるケースもあります。
新東名の静岡県内における6車線区間(駿河湾沼津SA~浜松SA間)では、2025年3月から「自動運転優先レーン」の実証実験が始まりました。平日の夜間(22時~翌5時)に、第一車線を「自動運転車優先レーン」としています。