実は航空分野でギネス持ち?

 1898年創業のグッドイヤー社(正式社名はグッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー)は日本ではタイヤメーカーとして有名ですが、実は飛行船全盛期には「飛行船」の大手メーカーでもありました。しかも同社による飛行船の運航は現在でも続いており、飛行船事業は今年で100周年を迎えています。

【写真】えっ…これが「超有名タイヤメーカー」の飛行船です

 これを記念して同社が2014年まで運航していた飛行船「スピリット・オブ・グッドイヤー号」の船体の一部を記念品として販売することになりました。スピリット・オブ・グッドイヤー号は飛行船史上最も長い期間運航された機体としてギネス記録を保持していましたが、今回販売される記念品はその船体を覆っていた外皮の一部を透明アクリルの中に封入したものです。

 この商品はグッドイヤー社のウェブサイト上で販売され、売り上げの一部はアメリカ・ウィスコンシン州オシュコシュ空港に隣接するEAA(全米実験航空機協会)博物館に寄付されます。

 毎年7月にそのオシュコシュ空港で開催される世界最大の航空ショー「EAAエア・ヴェンチャー」では毎年盛沢山のプログラムが組まれています。参加企業も多く、グッドイヤー社の飛行船もここに参加しています。

 同社では航空事業部を1910年に設立し航空関連事業に参入しました。そして1925年に飛行船を導入しました。1930年には電飾が導入され空からの広告に活躍しました。1955年からはアメリカの国民的行事でもあるアメリカン・フットボールの大学大会「ローズボウル」の会場上空でも宣伝飛行が始まりました。今では、飛行船から映像の中継も行われています。

「グッドイヤーの飛行船」どんなスペック?

 グッドイヤーでは2011年、ドイツ製新型飛行船の「ツェペリンNT(New Technology)」が導入されて現在は3機がアメリカ国内で運航されています。これらの飛行船はオハイオ州、フロリダ州、カリフォルニア州にそれぞれ1機が配置されて運航されています。

 現行機種の飛行船は全長75m、12人乗り、アメリカのライカミング社製200馬力エンジンを3機装備して最大速度125km/h、巡航速度115km/h、航続距離900km、滞空時間24時間、上昇限度は2600mと発表されています。

 グッドイヤー社はこのエア・ヴェンチャーでは半世紀もの間、毎年参加を果たしていますが、今年は飛行船運航100周年を祝うために2機の飛行船を参加させました。そのため、会場上空では2機の飛行船が並んで飛行する珍しい光景も見ることもできました。

 飛行船の仕組みは胴体内に空気より軽いヘリウムガスを大量に充てんして膨らませることで浮力を得ています。アメリカは世界最大のヘリウムガス生産国でもあるのでアメリカならではの乗り物ともいえそうです。ヘリコプターやeVTOL機のように機体を浮揚することに大量のエネルギーを必要としない点は大きな利点ですが船体が大きいため運航には風の影響を受けやすい点は欠点とされています。

 エンジンでプロペラを駆動することで推進力を得ていますが、これからは電気推進の飛行船も出現するでしょう。船体上面に太陽光パネルを張り付けた機体も登場するのではと筆者は想像しています。

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