パゴダ状の構造物と先端で回る球体がポイント

 イギリス海軍のデアリング級(または45型)駆逐艦「ドーントレス」が2025年8月12日朝、海上自衛隊横須賀基地(神奈川県)に接岸しました。デアリング級が日本に寄港するのは約12年ぶり。

横須賀基地では英国大使館のジュリア・ロングボトム駐日大使や横須賀地方総監の真殿知彦海将らが出席して歓迎式典が開かれました。

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「ドーントレス」は、デアリング級(45型)の2番艦として2010年6月に就役しています。設計と建造は英防衛大手BAEシステムズが手がけ、グラスゴーとポーツマスの両拠点でモジュール式の製造技術を用いて造られました。

 満載排水量は7350トン、全長は152.4mで、防空能力に秀でているのが特徴です。とはいえ、日本のまや型護衛艦(基準排水量8200トン)やアメリカのアーレイバーク級駆逐艦、スペインのアルバロ・デ・バサン級フリゲート(満載排水量5947トン)といったSPY-1レーダーを装備した、いわゆるイージス艦とは全く異なる独特なシルエットです。

 まず目につくのは、艦橋上にそびえるパゴダ状の構造物と、その最上部で回転する球体でしょう。これは、「SAMPSON」という多機能レーダーで、250マイル(約402.3km)以上離れた空中および水上目標を検知し、数百の目標を同時に追跡するとともに、自軍のミサイルを誘導することが可能です。

 艦載防空システムとして搭載する「PAAMS(シーヴァイパー)」により、これらのーダーで得られた情報に基づいて、シルバー垂直発射システム(VLS)から10秒以内に8発の艦対空ミサイルを発射し、最大16発を同時に誘導することで、70マイル以上離れた標的を高確率で墜とせるといいます。なお、搭載されているVLSは48セルです。

 固有武装として4.5インチ(114mm)単装砲を艦首に備えるほか、20mm機関砲による近接防御システム(CIWS)や、高速ボートや無人航空機(UAV)といった脅威に対応するための30mmオートマチック機関砲を装備しています。

「ドーントレス」いつまで日本にいる?

「ドーントレス」は、イギリス空母「プリンス・オブ・ウェールズ」を中心とした空母打撃群(CSG25)の一員として、ノルウェーのフリチョフ・ナンセン級フリゲート「ロアール・アムンセン」と共に来日しました。

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海上自衛隊横須賀基地の体育館で行われた歓迎式典(深水千翔撮影)。

 歓迎式典において、艦長のベンジャミン・ドリントン中佐は「艦長として、世界最先端の防空駆逐艦を指揮できることを誇りに思う。イギリス空母打撃群はグローバルな安全保障の基盤となっている。このような部隊なしには、海上貿易とサプライチェーンの安全を保証できない。オープンな海と自由貿易に依存する、(日英をはじめとした)我々のような国にとって不可欠な存在だ」と存在感の意義を強調しました。

 また、ジュリア・ロングボトム駐日大使は「インド太平洋地域における多国間協力の重要性が高まっていることを歓迎する。特に同盟国ノルウェーの皆さんが参加していることを嬉しく思う。日英間の親善関係を祝福するとともに、相互理解をいっそう深め、より安全で繁栄した未来へ共に歩んでいきたい」と述べました。

 CSG25が行う「ハイマスト作戦」は、インド太平洋地域にかけての安全保障に関するイギリスのコミットメントを再確認し、自国の貿易と産業発展をアピールすることが狙いです。オーストラリアで行われる多国間共同訓練「タリスマン・セイバー」や、海上自衛隊の護衛艦「かが」へのF-35B着艦といったことを通じて、NATO(北太平洋条約機構)加盟国と同盟国、パートナー国との連帯を示し、関係強化を図っています。

 ゆえに、このたびの空母打撃群の派遣に際して、イギリス軍は陸海空で計4500人以上を参加させており、なかでも海軍は海兵隊と合わせて過半数の2500人が関わっています。

 防衛省によれば「ドーントレス」は9月2日(海自横須賀地方総監部の資料によると9月3日)まで横須賀基地にいる予定です。前述したように、12年ぶりに日本に姿を見せたイギリス艦なので、この機会に日米のイージス艦と外観の差違や設計思想の違いを比べてみても面白いでしょう。

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