太平洋フェリーは、国内有数の長距離フェリーです。名古屋港~仙台港~苫小牧西港1330kmを約40時間かけて運航しており、豪華なサービスでも知られています。
仙台港19時発・苫小牧西港行きに乗船します。出発する仙台港フェリーターミナルは、JR仙台駅から連絡バスが運行されており便利です。17時46分の時点で、ターミナルには127人の乗船客が待っています。中には子どもの姿も見られました。
仙台港に停泊している「きそ」を眺めます。総トン数1万5795t、全長199.9m、最大速力26.73ノット(49.5km/h)で、外から見ても迫力があります。旅客定員768人、トラック183台、乗用車113台を搭載できる大型フェリーです。
18時15分乗船開始。デビューから20年がたちますが、エントランスの豪華さには感心します。
コンセプトは「南太平洋のしらべ」、デザインは「リゾートホテルのように優雅で洗練された豪華船」とウェブサイトにありますが、決して過大表現ではありません。現役大型フェリーでもトップクラスのゴージャスで重厚な雰囲気です。エントランスのある5階はショップ、ゲームコーナー、キッズルーム、カラオケスタジオ、展望大浴場、喫煙室、自販機スペースがあります。
客室は、2等和室、B寝台、S寝台、1等客室(バリアフリー対応洋室/和洋室/和室)が備わります。
2等和室は開放型のカーペット敷き。B寝台は長さ2m、幅80cm、高さ77cmの区画がロールカーテンで仕切られており、電源コンセントも備わります。S寝台も同様の設備ですが、テレビが付きます。
1等客室はシャワー、トイレ、冷蔵庫を備えた個室で、定員は和洋室が3人、和室が3~4人です。広さはいずれも17平方メートル。和洋室はベッド、和室は布団です。
6階に上がります。スタンドコーナー「マーメイドクラブ」と、シアターラウンジ「サザンクロス」、レストラン「タヒチ」が配置されています。
スタンドコーナーにはピアノも置かれており、その日は音楽家が演奏していました。なお、軽食を提供するカウンターも備わります。シアターラウンジは、筆者(安藤昌季:乗りものライター)の乗船時は夜に音楽イベント、朝に映画上映が行われていました。
レストランは、リゾートホテルのような内装です。料理はバイキング形式で、筆者の乗船時は和食中心のメニューでした。どちらかと言えば大人向けで、カレーやハンバーグのような子ども向けメニューは少ない印象。内容は季節によって変わるようですが、スタンドコーナーで子どもにカレーを食べさせていた家族が何組かいた理由を理解できました。
他とは一線を画した「目玉」客室6階の1等客室は、定員2人、広さ12平方メートル、ツインベッド、シャワー付きで、他の1等客室と同じです。また、特等洋室もあります。広さは17平方メートルで、定員は2~3人。1等との大きな違いは、シャワーではなく、バスルームであることです。
太平洋フェリー「きそ」の最高級客室「ロイヤルスイート」(安藤昌季撮影)
そして、豪華客室の「セミスイート」「スイート」「ロイヤルスイート」もこの階に配置されています。
セミスイートは32平方メートル、定員2~3人。クローゼット内に並ぶワイングラスが高級感を演出します。じゅうたんもふかふか。お茶のカップはノリタケ、スプーンはサントリーニとブランドもの。船長からのメッセージカードも特別感を演出します。
セミスイートとほぼ同等の設備を持つのが、スイートです。違いは、スイートが角部屋なので、視界がより広いという部分。定員は2~3人です。
そして目玉の客室が、ロイヤルスイートです。他のスイートとは一線を画したこげ茶色の重厚な内装。
なお、筆者はスイートに宿泊しました。ベッドの寝心地も抜群です。ただ、揺れの少なさや静粛性は、他社の最新鋭船の方がやや上と感じました。豪華な設備や内装も感心しましたが、道具立てとして、シャンプーやリンスは独立して高級品を置いた方が、より非日常の物語を感じられるように思えました。また、テレビは、ベッドで寝ながら見るにはやや小さく思えます。
7階は、特等和室が備わります。19平方メートル、定員2~3人、バスルーム付きの個室です。
仙台港から北海道を目指して北上していた「きそ」は、翌日の定刻11時、苫小牧西港フェリーターミナルに到着しました。豪華な設備、豊富な船内イベントは2025年現在でも十分に魅力的でした。