実は“真っ黒”ではない「CFRP製ボンネット」

 スポーツカーなど一部のモデルのなかには、たまにボンネットの部分だけボディカラーとは異なり、真っ黒になっているクルマがあります。なぜ、車体の色がボンネット部分だけ違う色なのでしょうか。

【50年以上前に!】これが1960年代の「ボンネットだけ黒い」国産スポーツカーです(写真で見る)

 ボンネットだけ黒いケースとして最も一般的なのが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を素材に用いたボンネットを装着している場合です。CPRPはカーボンファイバーとプラスチックの複合素材で、丈夫で軽量なことで知られています。その表面は一見して真っ黒に見えますが、実は近くでよく見ると、カーボン素材特有の模様が入っているのが確認できます。

 CFRP製ボンネットの最大のメリットは、鉄やアルミなどでできたボンネットに比べて、非常に軽量なことです。クルマの性能アップを図るうえで、車体を軽くすることは、エンジンのパワーアップなどと並びとても重要です。特に、車両のフロント周りの軽量化には、重量バランスの最適化や、操縦性の向上などの効果も期待できます。そのため、ボンネットをCFRP製パーツに置き換えることは、クルマの走行性能やコントロール性を上げるための“定番技”なのです。

 ところでCFRP製ボンネットは多くの場合、ボディと同じ色に塗ることもできます。しかし、ボンネットは外販部品としてそれなりに大きな面積があり、塗装すると塗料分の重量がプラスされ、軽量化のメリットが損なわれることがあります。さらに、CFRP素材独特の模様を魅力として考えるユーザーも多く、スポーツカーのオーナーの間では、あえてそのまま装着するケースが少なくないようです。

 ちなみに、CFRP製ボンネットは比較的最近、1990年代ごろから普及していったカスタムパーツです。ところが、はるか以前の1960~1970年代にもスポーツカーを中心に「ボンネットだけ黒く塗り分ける」スタイルが流行し、一部ではメーカー純正のカラーバリエーションとされたことがありました。

 その目的は、ドライバーの視界を確保するため。野球選手が目の下に装着する黒いアイパッチと原理はほぼ同じで、ボンネットに反射した太陽光が視界を遮らないよう、ボンネットをツヤ消しの黒で塗りつぶしていたのでした。

 ボンネットを艶消しブラックで塗りつぶすカスタムは、ラリーを戦う競技車両などから広まり、一般ユーザーの定番ドレスアップとしても流行しました。また、国産車では1969年にいすゞ自動車が発売したスポーツクーペ「ベレットGTR」に、オプションとしてツヤ消しブラックのボンネットを持つツートンカラーが用意されたほか、一部車種で純正採用するケースもいくつか見られました。

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