岡山電気軌道の路線バス(岡電バス)として活躍してきた同社最古参のバス「890」号車が、2025年10月に引退することが分かりました。同社が筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)の取材に明らかにしました。
「890」は岡電がバブル期の1990年1月に新車登録した車両で、2025年10月末で車検が切れます。老朽化しているため退役させることを決めました。「バブルへGO!」とばかりに郷愁をかき立ててくれるバス愛好家らに人気のある車両だけに、岡電は岡山市内で10月に開催されるイベントで展示予定です。
1990年式で三菱ふそうトラック・バス(川崎市)がシャーシを手がけ、福岡県の私鉄大手、西日本鉄道の子会社だった旧・西日本車体工業(NSK)が車体を架装しました。型式は「P-MP618M」です。
前面についた左右4灯の円形ヘッドライトが時代を感じさせるほか、銀色に輝くメッキ仕上げのバンパーも珍しい仕様です。岡電によると、1983(昭和58)年排出ガス規制適合車(P-規制車)で稼働可能な岡山市内唯一の車両です。
後ろドア(岡電バスでは「入口」)には4枚折り戸、前ドア(「出口」)は2枚折り戸になっており、それぞれ2段のステップがあります。車体側面の後部に社名の「岡山電気軌道」と表記し、後部のウィンカー(方向指示器)とテールランプ(尾灯)は横長の長方形になっています。
市街地向けの仕様車ながら、車内の座席は背もたれが高く、青いモケットが用いられており「着席重視の比較的落ち着いた仕様になっている」(岡電)といいます。
かつての岡電バスの雰囲気が健在「890」は、かつての岡電バスの雰囲気が健在です。車体塗装は白地に濃淡の青色のラインを入れ、岡電の路線バスが1983―2001年に採用していた色を残しています。
側面の窓も上下2段になった懐かしい形状。現在のバスは左右に開く窓が一般的です。行き先表示は導入当初は、方向幕でした。しかし、現在は発光ダイオード(LED)に改造されています。
「890」は岡電の岡南営業所(岡山市)に所属しており、市街地を走る路線で活躍。一時期は運転手の養成に使う「教習車」として用いられていましたが、近年は路線運行にも再び使われていました。
岡電は2025年10月11日(土曜)に岡山市で開催するイベント「2025 鉄道の日フェア」で「890」を展示する予定です。来場者は無料で見学できます。また、岡電の岡電観光センターが「890」の「さよならツアー」を9月と10月に実施し、参加者を募集する予定です。ただ、岡電は「現時点で詳細は決まっていない」と説明しています。

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