「ジムニーのほうが“男らしい”」という評価に異議アリ?

 軽ハイトワゴンとSUVを融合させたモデルの元祖である、スズキ「ハスラー」。2014年発売の初代、2020年からの現行2代目モデルともに「街乗り、悪路、なんでも来い!」な1台として、今も人気を博しています。

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 一方で、同門の軽本格4WD「ジムニー」と比較されることも多く、特に2018年に4代目ジムニーが登場して以降は「ジムニーに比べ、ハスラーは優等生で軟弱だ」と論じられることもあります。しかし、それは本当に正しい評価なのでしょうか。

 確かに、内外観のデザインは現行ジムニーのほうがヘビーデューティな雰囲気で、対するハスラーはどこか優しげでユーモラスな雰囲気があります。ところが、そんなハスラーには、ジムニーを凌駕するほど“男らしい”側面もあるのです。

 ハスラーの“男らしい”ポイントとして挙げたいのが、その実用性の高さです。柔和なデザインばかりに目が行きがちですが、現行のハスラーは現行ジムニーよりもホイールベースが210mm長く、室内空間も広く採られています。特に後席スペースの居住性は高く、体の大きい男性でも不満なく過ごせます。

 また、ハスラーは積載性が高いのも魅力です。もとより広い室内を持つハスラーですが、助手席を倒した場合は、2mを超える長さの荷物も積むこともでき、この点ではジムニーを完全に凌駕します。

 これらの特徴については「ハスラーはハイトワゴンでもあるから当然では?」と評することもできます。しかし、この幅広いユースに対応できる懐の深さこそが、ハスラーの“男らしさ”なのです。確かにジムニーは走破性に一点特化した硬派なモデルですが、荷物や人をガンガン積み、街乗りからちょっとしたアウトドアまで、マルチにこなせるのがハスラーの強みといえるでしょう。

“真の男らしさ”は、見た目だけじゃわからない

 では、クルマとして肝心な走行性能ではどうでしょうか。足回りについてですが、ジムニーの最低地上高は205mmで、ホイールサイズも16インチと比較的大型です。また、サスペンションもハスラーよりショックの吸収に優れていると言われ、当然ながら本格的な悪路での乗り心地は、ジムニーに軍配が上がります。

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2014年発売の初代ハスラー。一見優しいルックスだが、頼もしい包容力が“男らしい” (画像:スズキ)

 しかし、ハスラーの走破性が劣っているというわけでもありません。ハスラーの最低地上高は180mm、ホイールは15インチと、数値ではジムニーに及びませんが、軽ハイトワゴンとしてのユーティリティも考えれば、バランスのとれたスペックです。悪路でもジムニーよりはショックが大きいものの、乗り心地は優秀。また4WD仕様では、通常時は前輪をメインに駆動しつつ、滑りやすい路面では後輪にも駆動力を最適に分配し、悪路性能を高めています。

 さらに、パワーユニットは現行ジムニー・ハスラーともに同じR06A型3気筒ターボエンジン(ハスラーには自然吸気エンジンも設定あり)ですが、ハスラーには減速時の回生エネルギーで発電し、加速をモーターでアシストするマイルドハイブリッドシステムが搭載されています。安全装備に関しても、ハスラーには全方位モニター用カメラやアダプティブクルーズコントロールなど、ジムニーにはない装備が採用されているのが魅力的です。

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 ジムニーは長い歴史を持つ個性派モデルであり、走破性能をとにかく磨き上げることでブランドを築いてきました。実際に所有するうえでも、ジムニーには高い特別感があり、リセールバリューの高さなどでもハスラーをはるかに凌駕しています。

 一方、ハスラーにはジムニーほどの唯一無二の長所はありませんが、パッケージングはさまざまな用途に対応できるよう考え抜かれており、走行性能も現代技術をうまく活用しながらバランスされています。このような懐の深さを持つハスラーは、実はジムニーと比肩しうる完成度の高い1台なのではないでしょうか。

 筆者個人としては、2車のうち「乗れば乗るほど凄さがわかる」と思うのはハスラーのほうです。高度にバランスされた実用性と悪路性能を、優しそうなルックスに包んだハスラーは、何とも頼もしく、男らしい1台です。筆者はこの全方位的な魅力を考えると、“男らしい”頼もしさとは力強さだけでなく、“包容力の高さ”でもあるのだと感じるのです。

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