以前はギャンブル性が高かったモデル途中での“顔面整形”

 先日2025年9月1日、トヨタ「アクア」の改良モデルが発表され、“プリウス風”に一新されたフロントマスクが大きな話題を集めました。

【えっと、誰ですか…?】もはや“別人”レベルに顔が変わったクルマたち(写真で見る)

 これまでも、モデルライフの途中で外観デザインを大きく変更したクルマは数多く存在しましたが、デザインの大幅変更の結果は、事例によって明暗が大きく分かれています。

まずは販売や人気の回復につながった例を見ていきましょう。

存在感が復活し超ロングヒット中の「デリカD:5」

 三菱「デリカD:5」は2007年の発売から18年を迎える2025年現在も根強い支持を受けているミニバンタイプの4WDクロスオーバーです。2019年に内外装の一新を伴う大規模改良を実施し、フロントグリルは大型の「ダイナミックシールド」デザインとなり、ヘッドライトも二段構えの斬新なものへと変更されました。

 当時の三菱自動車は、2016年に発覚した燃費不正問題により業績不振に陥っており、また国内での新型車発表も停滞していました。こうした厳しい状況のなか、デリカD:5は先進的なデザインに刷新されたことや、あえて高級モデル中心のラインナップへと転換したことで人気が回復。改良初年度の2019年度は年間2万台レベルまで販売が復調し、現在に至るまで堅調に推移しています。

大胆なフェイスリフトで若者人気が復活した2代目「ウイングロード」

 1999年に登場した日産の小型ステーションワゴン「ウイングロード」の2代目も、大胆なスキンチェンジで人気が回復したモデルです。当初のデザインは手堅い仕上りな一方、新鮮味に欠けたためか、支持も伸び悩んでいました。

 これを受けて2001年に行われた大規模なマイナーチェンジでは、内外装やパワートレインが一新されました。フロント周りは、金属的な質感を強調した新デザインとなり、宣伝広告では「メタルのオモチャだ。」というキャッチコピーで“タフな道具”感をアピールしました。

 これが奏功し、ウイングロードの販売は回復。1999年にルノーと資本提携を締結してからの“日産復活”を印象付ける1台にもなりました。

まさかの再登板で”角目”が登場した初代「シエンタ」

 トヨタの初代「シエンタ」も、大きなスキンチェンジを行ったモデルのひとつですが、厳密には“変化球”の成功例というのが正しいかもしれません。というのも、初代シエンタは2010年に一度生産を終了したものの、後継モデルの「パッソセッテ」が極めて不振だったため、翌2011年に復活を遂げたモデルだからです。

 この異例の復活に伴って追加されたのが、チャームポイントだった丸形ヘッドランプを四角く変えた「DICE(ダイス)」と呼ばれるグレードです。従来の丸形ライトモデルとともに堅実に支持を集め、2015年には無事に2代目シエンタへとバトンタッチ。以来、現行の3代目まで高い人気を保っています。

「イメチェン失敗」のケースも少なくない?

 成功例の一方で、大掛かりなスキンチェンジが販売や人気の回復につながらなかったケースも少なくありません。

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大きく期待されたものの、人気が急落した9代目「スカイライン」(画像:日産)

名車の復権に奔走した9代目「スカイライン」

 1993年にフルモデルチェンジした9代目日産「スカイライン(R33型)」は、先代の8代目(R32型)が高く評価されたこともあり、大きな期待のなかデビューしました。ところが、居住性改善のためにサイズが大きくなったことや、丸っこくボリューム感のあるデザインが不評を買い、伸び悩みました。

 そのため、R33型は1996年にビッグマイナーチェンジを敢行。ボンネットやヘッドランプをよりシャープな造形に変更し、バンパーには大型コンビランプを組み込んでイメージチェンジを図りましたが、性能面での目立った改良がなかったこともあり、人気回復には至りませんでした。

イメージは激変も、再浮上できなかった「SAI」

 2009年に発売されたトヨタのハイブリッドセダン「SAI」は、プリウス以来2車種目のハイブリッド専用モデルとしてデビューしましたが、兄弟車に当たるレクサス「HS」ともども、当時爆発的にヒットしていた3代目プリウスの陰に隠れ、人気はいまひとつ低迷しました。

 そこで、2013年には内外装を刷新するビッグマイナーチェンジを実施。

顔つきは一気に攻撃的なデザインとなりましたが、やはり販売は伸び悩み、2017年に1代限りで生産を終えています。

“3面相”のフロントマスクを持つ2代目「インプレッサ」

 2000年にデビューした2代目スバル「インプレッサ」は、ラリー仕込みの走りの良い主力の小型モデルでしたが、フロントマスクにはこのクラスでは珍しい、丸形ヘッドライトを基調としたデザインを採用しました。通称“丸目”と呼ばれるこのフェイスは、市場から奇抜なものと捉えられ、評価は芳しくありませんでした。

 販売を回復すべく、2002年にはよりスポーティな顔立ちに一新(通称“涙目”)されましたが、今度は睨みの利いた表情が、女性層を遠ざける結果に。そのため2005年には再びフロントマスクが全面変更され、スバルのファミリーフェイスを採用した通称“鷹目”へと移行しました。しかし、2度のスキンチェンジも充分な効果は得られず、2007年には3代目へモデルチェンジしました。

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 かつて国産車は2年でマイナーチェンジ、4年でフルモデルチェンジという周期が一般的でしたが、近年はモデルサイクルが伸びており、1モデルを長期でブラッシュアップしていくケースも珍しくなくなりました。そのため、従来までの1世代分に相当する販売期間を、大規模なマイナーチェンジによって戦う車種も現れており、今回の改良型アクアも、そうしたケースのひとつとして考えられるでしょう。

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