ウクライナ政府の公式サイト「ユナイテッド24」は2025年9月16日、現在唯一稼働しているAn-70輸送機がポーランドに向けて飛行したと報じました。
【画像】キレイ? これが、An-70の花びらみたいなプロペラです
An-70は、ウクライナの航空機メーカー「O・K・アントーノウ記念航空科学技術複合体(アントノフ)」が開発した、4発ターボプロップエンジンを搭載する中型輸送機です。
1994年12月16日に初飛行を行った本機は、軍民両用の次世代輸送・貨物機として開発され、「プロップファン」と呼ばれる推進方式を世界で初めて採用した機体でもあります。
このプロップファンとは、通常のターボプロップエンジンの発展型で、後退角のついた二重のプロペラが同軸上で互いに逆方向に回転する「二重反転プロペラ」を特徴とします。なお、エンジン停止時には、プロペラが花びらのような形状になるのが特徴です。
プロップファンは、従来のターボプロップ機よりも高速で飛行でき、ジェット機の一般的なターボファンエンジンに比べて燃費性能に優れているという利点があります。また、短距離離着陸性能にも優れており、600~800メートルの未舗装滑走路での運用も可能とされています。
当初はロシアとの共同開発で進められ、両国の空軍に導入される計画でしたが、2014年のクリミア併合および、それに関連するドンバス紛争を機に両国の関係が悪化し、計画は中断。その後、ウクライナ単独での量産化を目指しましたが、情勢の悪化や資金不足などにより実現には至らず、現時点では2機のみが製造され、そのうち1機がウクライナ空軍に配備されている状況です。
そのウクライナ空軍のAn-70が、2025年9月15日にポーランド領内のデンブリン空港に着陸したとのことです。飛行中、ウクライナ領空内では安全確保のためトランスポンダー(応答装置)をオフにしていたとされ、ポーランドに入空後にオンに切り替えたと報じられています。なお、この飛行の具体的な目的については公表されていません。