自社登録しなければ「達成できない」目標

 公正取引委員会は2025年9月18日、ハーレーダビッドソンの日本法人「ハーレーダビッドソンジャパン」(玉木一史社長)に対して、排除措置命令および課徴金納付命令を出しました。

【公取委がイラスト解説】これがハーレー日本法人「違反の手口」です(画像)

 課徴金額は2億1147万円です。

課徴金額は、認定された違反行為の期間、違反行為が行われた相手事業者の売上げの1%と定められていますが、昨年度に命令が出された33の違反事業者に対しての課徴金額は平均1億円でした。同社の違反行為の大きさが際立ちます。

 問われたのは、独占禁止法19条の優越的地位の乱用です。日本法人が割り当てられた販売売上目標を、正規ディーラー(販売店)に対して割り振り、その目標が達成できなかった場合には、事業者名義で自社登録を迫っていたことが問題視されました。公正取引委員会の調査に応じた日本法人関係者も「自社登録を行わなければ(目標を)達成できなかった」と答えています。

「ハーレーダビッドソンジャパン」と正規ディーラーの間には資本関係はなく、同社が輸入する車体、部品、アパレルの購入は、それぞれの正規ディーラーが請求価格で買い取ります。しかし、同社は正規ディーラーに対して、自社登録という形で余剰在庫を抱えて目標額を達成することを強く要求。公正取引委員会の調査では、少なくとも38社に対して優越的地位の濫用があったことが確認されました。

 この特定ディーラーに対する違反行為は、遅くとも2023年1月31日~2024年8月5日まで行われています。この間、日本法人が設定した目標額における自社登録の割合は、2023年で約29%、2024年で約34%でした。これがそのまま正規ディーラーの過剰在庫につながっています。

 公正取引委員会が立入検査に入ったことで、独禁法違反となる目標の設定は止まりましたが、過剰在庫の解消はこれからです。

これはハーレーブランドの2025年の展開に大きな影響を及ぼしています。

「日本に合わない大型モデルがどんどん送り込まれた」

「ハーレーダビッドソンジャパン」は、正規ディーラーに対して目標額での買取を求めただけではありませんでした。日本法人が決めたモデルを無条件で受け入れることも迫っていました。ある販売店は、ハーレーダビッドソンジャパンの問題点を次のように語っています。

ハーレー日本法人「販売店いじめ」の実際 「売れ筋モデルを買う...の画像はこちら >>

ハーレーダビッドソンジャパンが独禁法違反で課徴金命令を受けた(中島みなみ撮影)

「日本のユーザーが求めるいわゆる売れ筋モデルを買うこともできず、日本の道路事情に合わない大型モデルがどんどん送り込まれて過剰在庫を抱えることになった。それを自社登録で解消するように求められたが、それも限界にある」

 公正取引委員会は課徴金納付命令とともに、法令違反の排除措置命令を出しています。そこには、対ディーラーにとどまらず是正措置について広く通知するだけでなく、同社社員に対しても対策の周知徹底を図ること、その内容については、あらかじめ公取委の承認を受けること、行動指針を定めて第三者の監査を受け、命令書が送達された日から3年間、その内容を報告することが定められました。

「ハーレーダビッドソンジャパン」は玉木社長名で文書を出しています。

「公正取引委員会による当社に対する調査結果の公表および命令について厳粛かつ真摯に受け止めております。当社は2024年7月30日の公正取引委員会の立ち入り検査以降、検査に全面的に協力し、合わせて自主的な内部調査を実施し、既に是正措置を講じてまいりました。今後はコンプライアンス順守の再徹底ならびに信頼の回復に努めるとともに 全国のディーラーの皆さまと緊密に連携しながら、製品をお届けすることに尽力してまいります」

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