東京都内でたまに「邪魔すぎる電柱」に出くわすことがあります。道路の端ではなく中央寄りに立ち、明らかにクルマの通行を阻害すると考えられるものが少なくありません。
【うお、これは邪魔…】道のど真ん中の「ポツンと電柱」たち(写真)
※ ※ ※
まず最初は、新宿区若松町の裏路地にある電柱です。道幅3m弱の一方通行の道路の路肩から60cmほどのところにぽつんと立っていて、反対側には普通車でも通り抜けられるほどの幅は残されていますが、その存在には違和感を抱かざるを得ません。
電柱には「学童に注意」という黄色く目立つ看板が付けられていますが、その看板により電柱の存在が引き立てられ、クルマの衝突を防いでいる印象です。
ここは、かつて道路幅が狭く、住宅の敷地がこの電柱の際まで迫っていました。しかし住宅の建て替え時に道路中心線から法で定められた「セットバック」を行った結果、電柱だけがこのように道路に取り残されたのです。
つぎは北区上十条の、交差点を阻む電柱です。ここでは道幅3mほどの路地同士がT字に交差していますが、その交差部の中央近くに電柱と指定方向外進行禁止の道路標識が立っているのです。
かつてはさらに狭い街路だったのを、交差点に面した住宅数棟が事業所に建て替えられたときにセットバックされ、さらに「角敷地の建築制限(隅切り)」により事業所の土地の角が事実上の道路用地として提供されたため、電柱だけが残ってしまったようです。
隅切りする一方で電柱を残すのは不合理としか思えませんが、この地域には「補助第73号線」の建設が予定されており、この電柱も将来的には消滅することになりそうです。
このようにセットバックが「邪魔すぎる電柱」を残す一因ですが、あまりにも狭い道だと、残された電柱が「道の真ん中」という例もあります。
板橋区板橋にある中山道と並行する路地は、そもそもクルマが通ることができない道幅でしたが、その中央部分だけをセットバックしたため、道路の中央に電柱が残る形となっています。
豊島区東池袋の住宅街には、電柱が十字路の中央にそびえ立つ場所が。ふつうであれば危険きわまりない状況ですが、十字路のうち二方向はクルマが通れない道幅、そして一方向は行き止まりとなっているため、通行するのは近隣の数戸の住宅のクルマであることから、事故の危険はほぼないと考えられます。
新宿区若松町の電柱。左側の家並みはかつてこの電柱ぎりぎりまで迫っていたが、建て替えによりセットバックし、電柱が残された(植村祐介撮影)
ただ電柱には反射板の設置もなく、夜間の自転車からの被視認性は良好とは言えないでしょう。なお近隣ではこの地域を通り抜ける道路が事業中であることから、近い将来には電柱の移設もありえそうです。
そして最後にご紹介するのが、路地裏にファッションブティックなどが立ち並ぶ渋谷区神宮前の商業地の電柱です。ここは、かつては明治通りから一本入った住宅地でしたが、近年になって商店が多数立地するようになり、そうしたお店を訪ねる歩行者だけでなく、配送のクルマも多数行き交います。
電柱は変則三叉路のちょうど中央にあり、クルマで通りかかったときには「電柱のどちら側を通ればいいのか」に迷う形状です。またそうしたクルマの衝突を防ぐためか、電柱がある交差点の角に面した商業ビルの敷地の角には、頑丈そうな鉄の柱が二本立てられています。
この交差点と電柱とがいまの形になってからもう長い時間が経ちますが、電柱の移設は行われていません。交差点前後の道路形状から、速度を上げたクルマが進入することは考えにくいこともあり、「この状態で落ち着いている」との判断から、ずっとこのままの状態が続いていくのかもしれません。
ちなみに、「電柱」そのものは、やがて数を減らしていく存在ではあります。防災、美観、そして歩行者の安全性を確保するため、電線の配線は道路の地下空間を利用するなどの「無電柱化」が望ましいとされています。しかしその達成率(距離ベース)は2023年現在、進捗している東京都区内でも48.1%とほぼ半分、東京電力全社では10.3%、電力10社計ではわずか6.0%でしかありません(東京電力ホールディングス調べ)。