2025年9月、北九州空港に韓国から「軽量スポーツ航空機(以下:LSA)」が初めて来日しました。日本では“実験機”扱いの機体です。
【写真】えっ…これが「北九州空港に飛来の日本じゃ珍飛行機」全貌です
今回、北九州空港に到着したのは韓国・京畿道で飛行学校とLSAの販売などを手掛ける「ハヌルヌリ飛行学校」の所属機でチェコのBRMエアロ製「ブリステルNG5」と呼ばれる機種です。
この機種は飛行学校で使用される練習機や自家用向けに生産されているLSAで、すでに600機以上が生産されています。多くの機種が存在するLSAのなかで人気機種の一つです。エンジンは100馬力、燃料消費が少ない「ロータックス912」を搭載。燃料を満載すると8時間以上の航続性能があります。巡航速度は214km/hです。
今回の飛行は北九州空港での給油は行わずに、韓国の襄陽(ヤンヤン)国際空港から北九州空港を往復しています。
今回飛行したパイロット、Ming-Uk Anさんによると、襄陽国際空港を離陸後、釜山上空を経由して北九州空港へ飛来したといいます。釜山の金海国際空港は混雑空港で離着陸枠を取得することが困難なため、襄陽国際空港で出国と入国手続きを行ったとのことです。往路の所要時間はおよそ3時間9分。
このLSAですが、先述の通り実は日本では実験機扱いです。世界の多くの国々がLSAを正式な航空機として認めているのにもかかわらずです。そのため、飛行には多くの制約が伴い、実用機として運航することはほぼ不可能な状態になっています。
現行の航空法では、日本国籍のLSAは管制空域を飛行することができませんが、外国籍のLSAは飛行が可能というおかしな状況が生まれています。今回の来日は韓国籍のLSAであることから、普通の航空機として管制空域を飛行して北九州空港に着陸しました。この現状は法的整合性がないばかりか、合理的ですらない“矛盾”と筆者は考えています。
LSAは製造や運航など多くの面で規制が緩和されていますが、座席数は2座席まで、機体の総重量は600kgなどの条件がありました。アメリカでは今年、航空法の大規模な改訂が予定されていて、LSAに関する制約が大幅に緩和されます。一例をあげると、座席数は4座席に、機体重量の制限は撤廃になります。
アメリカでは新しい航空法が本年10月中旬より施行される予定で、この新しいLSAのルールが適用されると、4人乗りの単発機はそのほぼ全機種がLSAの条件を満たすことになります。これをうけて、各国もアメリカの動きに追従する動きを見せています。
一方で日本だけがLSAを実用機として認めていません。このままでは、日本は航空の分野で世界から取り残されることになるでしょう。