かつて「夢の乗りもの」と呼ばれ、いまJR東海でも次世代の新幹線として開発が進められている「リニアモーターカー」。その“未来の乗りもの”が、じつは日本でたった一か所、すでに常設運行されている場所があります。
「リニモ」は藤が丘駅(名古屋市名東区)~八草駅(豊田市)間の約8.9kmを結ぶ路線で、2005年に開業しました。もともとは「愛・地球博(愛知万博)」へのアクセス路線として整備されたもので、いまも地域の通勤・通学路線として現役です。
「リニアモーターカー」の最大の特長は、磁力で車体を浮かせて走ること。走行中の「リニモ」は、地面からわずか約8ミリ浮上しています。仕組みとしては、車体に取り付けられた電磁石に電流を流すことで、レールとの間に吸引力を生み出し、浮き上がったまま進むというもの。運転は全自動で行われ、最高速度は100km/h。無人運転の鉄道としては国内最速クラスです。
駅の雰囲気は都市型モノレールに近く、まだまだ清潔感があります。交通系ICカードにも対応しており、スムーズに乗車可能。ホームは全面スクリーン式のドアで、安全対策もばっちりです。
いざ乗り込んでみると、発車直前に「ガコン」という独特の音が。これが“浮く準備”の合図のようです。走り出すと加速はとてもスムーズで、驚くほど静か。愛知高速交通が「レールとの接触がなく、騒音や振動が少ない」と説明しているとおり、まさに“空を滑るような”乗り心地です。雨にも強く、急な坂道も軽々と登るなど、通常の鉄道とは一味違うメリットもあるそうです。
一方、JR東海が開発を進めている「リニア中央新幹線」は、仕組みそのものが異なります。こちらはマイナス269度にまで冷却した「超伝導磁石」を使うことで、リニモとは比べものにならない強い磁力を発生させ、最高時速約500kmという“桁違いのスピード”を実現しています。
つまり、リニモは「街で乗れる未来の電車」、JRのリニアは「国を横断する未来の弾丸」。同じ“浮く電車”でも、目的もスケールもまったく違う存在といえるでしょう。

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