ドナルド・トランプ米大統領の訪日に伴い、2025年10月27日に羽田空港へ飛来した大統領専用機VC-25A「エアフォースワン」は多くの注目を集めました。
実はこの時、もうひとつの大統領専用機が羽田空港でトランプ大統領の到着を待っていました。
「マリーンワン」とは、アメリカ大統領を乗せた際の海兵隊機のコールサインです。アメリカ大統領はホワイトハウス(合衆国大統領官邸)から、最も近い空軍飛行場であるアンドルーズ空軍基地へ向かう場合など、短距離を移動する際は専用のヘリコプターを使用します。外遊時は事前にアメリカ本国から現地へと輸送され、大統領専用車「ビースト」などと共に大統領の移動を助けます。
トランプ大統領は今回、羽田空港と港区六本木にある在日米陸軍施設「赤坂プレスセンター」とのあいだを「マリーンワン」で移動しました。
要人輸送を担う第1海兵ヘリコプター飛行隊では、大統領や副大統領、閣僚などの移動で使用する機体として、SH-3哨戒ヘリをベースにしたVH-3Dと、汎用ヘリUH-60「ブラックホーク」をベースにしたVH-60N「ホワイトホーク」に加え、シコルスキー「S-92」をベースにした新型のVH-92A「パトリオット」を運用しています。
これらを「マリーンワン」として運用する際は、常に同一機種で編隊を組んで飛行します。2022年5月にバイデン前大統領が来日したときは、横田基地(東京都)で大勢の来場者が見守るなか、2機の「マリーンワン」が同時に飛び立ちました。
ちなみに2機セットというイメージが強いですが、多い時には5機編隊で運用されることもあるそうです。離陸後は大統領がどの機体に乗っているかわからなくするため、定期的に隊列を変えて目的地へと飛行します。
トランプ大統領が使用したヘリコプターVH-3Dは、1978(昭和53)年にデビューした40年選手の大ベテランです。カーター大統領の時代から幾度も改修を重ねて使用してきたものの、老朽化が進んでいたことから、後継機種の導入が大きな課題となっていました。
新たに運用が始まった大統領専用ヘリSH-92A(画像:アメリカ海兵隊)。
新しい「マリーンワン」の選定については2000年代から検討されていましたが、2001(平成13)年に発生したアメリカ同時多発テロ事件や、アグスタウエストランド製AW101をベースにした要人専用機の開発遅延とコスト超過による採用中止など、さまざまなゴタゴタが重なり、機種更新は2020年代にまでずれ込んでいます。
新型の大統領専用ヘリコプターであるVH-92Aについて、アメリカ国防総省は既存のVH-3DとVH-60Nを置き換えるため、VIP仕様のVH-92Aを21機、このほかに訓練用や各種支援用として通常の輸送型CH-92Aを2機、計23機調達する計画を立てられ、2024年8月に全機の納入が完了しました。同月、バイデン前大統領が搭乗し、初めて「マリーンワン」として任務飛行を行っています。
VH-3Dは2026年に退役する見込みのため、「マリーンワン」として日本の空を飛行するのは今回が最後かもしれません。
ちなみに「エアフォースワン」も、ボーイング747-200Bをベースにした現行の機体(VC-25A)から、ボーイング747-8をベースにした新型機(VC-25B)へ置き換えられることが決まっているため、そのうち最新鋭機で揃えられた大統領専用機のペアの活躍を見ることができるようになると思われます。

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