日本からハワイ・ホノルルへのフライトは、成田、羽田、関西空港などを20時~22時ごろに出発し、現地には同日の朝8時~10時ごろに到着するパターンが主流です。この「夜出発・朝着」スケジュールが定着している背景は、どのようなものがあるのでしょうか。
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ハワイは日本よりマイナス19時間の時差があります。この大きな時差のため、夜に日本を出発すると、おおむね7時間から7時間半のフライトを経て日付変更線を越え、出発した日と同じ日の朝に到着できます。
これにより、旅行者は出発日の仕事を終えてから空港へ向かい、機内で一晩過ごすことで、到着初日の朝から時間を有効に使えます。まさに「1日得した」ような感覚で、限られた休暇を最大限に活用できるというメリットがあるわけです。
また、夜間フライトは自然な睡眠を取りやすく、到着後に太陽光を浴びて活動することで体内時計をリセットしやすく、時差ボケを抑える効果も期待できるでしょう。
しかし、乗客のメリット以上に、この深夜便ダイヤを決定づけているのが、航空会社の経営戦略、特に「機材繰り」と呼ばれる航空機の運用計画です。
航空会社の戦略:「機材繰り」が生む夜行便の必然性国際線に使われる大型旅客機は1機数百億円という高価な資産で、利益を生むには地上待機時間を極力減らし、常に飛ばし続ける必要があります。そのため、航空会社は1機を複数路線に効率的に投入する綿密なスケジュールを組みます。
ホノルル、ダニエル・K・イノウエ国際空港に駐機するJAL機(乗りものニュース編集部撮影)。
ここで重要なのが、日本とホノルル間の飛行時間です。偏西風の影響で時刻表上は往路(日本→ホノルル)が約7時間から7時間半、復路(ホノルル→日本)が約8時間半~9時間(冬季スケジュールの場合)。この所要時間が、機体をほぼ24時間で一巡させる理想的な運用サイクルを可能にします。
具体的には、ホノルルを昼過ぎに出発した便が日本に夕方到着し、整備や清掃を済ませて、同じ機材がその夜に再びホノルルへ出発します。翌朝ホノルルに到着し、短い地上待機ののち昼過ぎに日本へ向かうという「ループ」が作られた結果、機材は地上待機が最小化され、ほぼ24時間稼働を維持できます。
日本側の空港事情も夜行便を後押しします。成田空港には従来「カーフュー」と呼ばれる離着陸制限がある時間が23時~翌6時となっており、定時性確保の観点からホノルル行きの出発は21時~22時台に設定されてきました。
2019年10月27日以降はA滑走路の運用が0時まで延長されましたが、定期路線の安定運用上、出発は依然として夜間帯が中心です。
一方、羽田空港は昼間の発着枠が国内線や欧米線でほぼ埋まっており、ホノルル線に昼発便を設定するのは難しいのが現状です。こうした発着枠の制約に加え、機材繰りの合理性、乗客メリットなどが重なり合い、結果的に夜行便が主流となっています。
また、到着地のダニエル・K・イノウエ国際空港(ホノルル)側も、日本などアジア発の「朝の到着の波」を前提に運用を最適化しています。税関・国境警備局(CBP)や検疫、地上交通などのリソースは午前のピークに合わせて最大化され、一見混雑していても空港全体として効率的に処理できる体制が整っています。
日本からホノルルへのフライトが深夜に集中するのは、旅客の利便性・航空会社の経済合理性・空港運用上の制約が複雑に絡み合い、結果的に最も無理のない形に落ち着いた“必然のダイヤ”といえるでしょう。

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