韓国版ハイマースが初公開

 2025年10月20日より韓国の首都ソウルで開催された防衛展示会「ソウル ADEX 2025」において、韓国の防衛企業ハンファ・エアロスペースが新型多連装ロケット砲「HPRS(高性能発射ロケットシステム)」を初公開しました。

【デカい!】韓国が造った重量30t超えの8輪式ロケット砲「チョンム」です(写真で見る)

 この車両は6WDの装甲トラックに可動式の多連装ロケット砲が搭載されています。

車体はトラックシャシーがベースのため機動性が高く、射撃位置への進出から射撃後の退避まで素早く行うことで、戦場における生残性も高くなっているのが特徴です。現在はまだ開発中の段階ですが、展示された試作車は実際にロケット弾を発射でき、来年頃には実射試験が行われる予定だそうです。

 同じく、トラックシャシー型の自走式多連装ロケット砲というと、ウクライナ戦争で注目を集めたアメリカ製の「HIMARS(ハイマース)」が有名ですが、この「HPRS」は外見やコンセプトが非常によく似ています。

 ロケット弾といえば、以前は「安価な無誘導兵器」の代名詞でしたが、近年は高性能な誘導システムと組み合わせることで、遠方の目標を正確に攻撃できる長射程兵器へと進化しています。また、同じランチャーから発射できる射程数百kmの地対地ミサイルも登場していることから、いまや自走式の多連装ロケット砲は、面制圧兵器ではなく、遠方の地上目標をピンポイント攻撃できる新たな精密誘導兵器へと運用の仕方が変わっています。

 実際、「HIMARS」を運用するウクライナ軍は、誘導ロケットやATACMS地対地ミサイルを使用して、前線後方にあるロシア軍の拠点や弾薬集積所を効果的に攻撃しており、その効果は戦況に変化を与えるほどの戦力となっています。

「HPRS」で発射可能な弾薬には、射程80kmのCGR-080、射程160kmのCTM-MR、射程290kmのCTM-290などがあり、開発が完了すれば強力な長距離攻撃兵器となるでしょう。

兵器を小さくした理由

 ハンファ・エアロスペースでは、「HPRS」に先んじて装輪式多連装ロケットランチャーシステム「チョンム(Chunmoo)」を開発・生産しており、「K239」の型式で韓国陸軍に導入されているほか、UAE(アラブ首長国連邦)やサウジアラビア、ポーランドにも採用されるなど、海外輸出にも成功しています。

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「ソウル ADEX 2025」で初公開された「HPRS」試験車両(布留川 司撮影)。

 しかし、「チョンム」の欠点は機動性の低さにありました。「チョンム」は「HPRS」より2倍の弾薬を搭載可能ですが、その重武装によって自重は燃料まで含めると約31tにもなります。この重量ゆえに悪路走破性などはそこまで高くなく、空輸できる輸送機も限られるなど、さまざまな制約がありました。

「HPRS」は、この「チョンム」をコンパクトにした小型化バージョンといえるモデルで、その開発を主導しているのは韓国陸軍ではなく韓国海兵隊です。海兵隊はその特性上、作戦では上陸用舟艇や航空機での空輸を陸軍よりも重視するため、重武装の兵器よりも、軽量で移動や輸送がしやすい機動性のある多連装ロケット砲を必要としたと言えるでしょう。

「HPRS」の搭載弾薬数は、「チョンム」と比べ半分に減りましたが、代わりに車体は小型化され、自重は約19tにまで軽量化されています。これによって、上陸用舟艇による海上からの揚陸や、C-130「ハーキュリーズ」クラスの戦術輸送機による空輸が可能となりました。こうして、機動性を生かした戦い方をする海兵隊に最適なロケットランチャーシステムとなっています。

 また、ハンファ・エアロスペースでは「HPRS」と「チョンム」用の新しい弾薬として、最大射程160kmの対艦弾道ミサイル「CTM-ASBM」の開発も進めています。これと「HPRS」を組み合わせれば、侵攻してくる敵艦艇や上陸部隊を迎撃できる沿岸防衛用の地対艦兵器となります。さらに「HPRS」を完全無人化した無人車両バージョンの開発も進められているため、運用人員の削減や、破壊された際の人的損失の軽減も期待されます。

「HPRS」は一見すると「HIMARS」に酷似しているものの、搭載弾薬のバリエーション化や無人型の開発によって、今後は独自の多連装ロケット砲へと進化していくようです。ハンファ・エアロスペースでは当面は韓国海兵隊向けの開発に専念するそうですが、その後はアジア各国を中心に、輸出も目指す模様です。

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