アルゼンチン海軍は2025年11月10日、S-2T「ターボトラッカー」対潜哨戒機の公の場でのラストフライトを実施しました。
【画像】「ちょっと空母貸して…」これが、ブラジルで空母を借りた訓練です
機体はチュブ州にあるアルミランテ・サール海軍基地から離陸し、パタゴニア地域の海水浴場として有名なプラヤ・ウニオンの海岸上空を低空飛行して、別れを告げました。
同機の歴史は、1959年の空母「インデペンデンシア」の導入に際し、アルゼンチン海軍航空隊向けに6機のS-2A「トラッカー」が購入され、1962年に運用が開始されたことに始まります。
その後、アルゼンチン海軍の空母が「ベインティシンコ・デ・マヨ」に替わった後も運用が続き、1982年のフォークランド紛争にも参加しました。同紛争では全機で520時間以上の飛行を重ねながら1機も失われず、その功績により海軍航空隊に勲章が授与されています。
空母「ベインティシンコ・デ・マヨ」退役後も地上基地での運用は継続され、1990年代にはエンジンがターボプロップ化され、S-2T「ターボトラッカー」として再任務に就きました。また、将来的な空母運用を見据え、当時ブラジル海軍で運用されていた空母「サンパウロ」の飛行甲板での訓練も行われています。
しかし、2020年代に入り、60年以上運用されてきたS-2T「ターボトラッカー」は運用限界に達しており、ノルウェーから購入したP-3「オライオン」を後継機として選定、近い将来の退役が発表されています。
既に、「ベインティシンコ・デ・マヨ」で運用されていたA-4Q「スカイホーク」や「シュペルエタンダール」攻撃機は退役しており、今回S-2T「ターボトラッカー」が退役すると、アルゼンチン海軍で空母艦載機として経験がある固定翼機の運用はゼロになります。
アルゼンチン軍は、度重なる経済政策の失敗による財政難の影響で国防費が大幅に削減されており、海軍は潜水艦の再保有が最優先であり、現状では空母の再保有はかなり困難になっています。
なお、公の場でのフライトは今回が最後とされていますが、現地メディアによると、11月13日にはコルドバにあるアルゼンチン空軍航空学校での飛行が目撃されたとのことです。

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