ミニバンはまず通れない「高さ1.75m」のアンダーパス

 東京都心から約15kmのエリアを環状に走る東京外環道の千葉区間(三郷南IC−高谷JCT)間は2018年6月に開通しました。このうち、外環道と京葉道路が交差する「京葉JCT」は、ランプのほぼ全体が地下に収められた珍しいJCTです。

【天井ギリギリ!】これが千葉の「提灯殺しガード」です!(写真)

 千葉区間は、すでに市街地化が進み人口密集地となっていたエリアを結んでいます。用地買収をできるだけ少なくするため、外環道は地下に通され、京葉JCTは地上を走る京葉道路とをできるだけコンパクトな形で結ぶ設計となっています。

 とはいえ、こうした一連の工事およびJCTの新設で、この地域の一般道は寸断され、動線はやや不便になった部分は否めません。ただ京葉道路をアンダーパスして市街地の南北を結んでいた歩行者用の道路については、一部に改良が加えられ、影響が最小限となるように工夫されています。

 京葉JCTから400mほど西で、京葉道路は千葉県道6号をオーバーパスしますが、この立体交差から京葉JCTまでの間にはそもそも2本の生活道路がありました。

 1本目は市川市稲荷木(とうかぎ)の住宅街を抜ける道で、京葉道路の下を実質1車線の車道+歩道でくぐります。このアンダーパスはクルマのすれ違いこそできないものの、一方通行ではなく、対向車がある場合はどちらかのクルマが入口の手前で待機して、譲り合っての通行となります。なおアンダーパスの全長は、上を走る京葉道路の幅員が外環道との分流、合流車線で広がったため、以前よりも長くなったものと思われます。

 このアンダーパスで、実質1車線という狭さ以上に特徴的なのが、わずか「1.75m」という車高制限です。

 かつて東京高輪でJR線をくぐっていた「高輪橋架道橋下区道」は高さ制限1.5m、天井までの高さは1.7mとされ、タクシーの社名灯を破損させる「提灯殺しのガード」の異名をとっていました。この京葉道路のアンダーパスの1.75mは、ミニバンが乗用車の“標準形”となっているいま、十分に低いと言えます。

 ちなみに「ジャパンタクシー」の車高は標準で1.75mちょうどなのでアウト。

軽乗用車でも、現在の人気トップ4の「ムーヴ」「スペーシア」「タント」「N-BOX」のうち、全高が1.75mを下回るのはムーヴだけです。そのムーヴでもクリアランスは10cm以下で、実際には制限の1.75mよりも数cmのマージンがあるとは言え、初見で進入するのはちょっと躊躇しそうです。

 一方、1.75mという高さは、平均的な日本人男性なら、かがむことなく歩いて通り抜けられそうに思えます。しかしここには“ワナ”があります。車道の路肩分に設けられた歩道は、アンダーパス中央部で車道と段差が付けられているため、天井が相対的に低くなっているのです。そのため、身長が180cm近い人は、窮屈な恰好で歩くことを強いられるはずです。

歩行者・自転車専用になったもう1本の道 しかし…

 さて、もうひとつのアンダーパスは、ここから京葉JCTへ50mほど近づいたところにあります。こちらは京葉道路の下を深く掘り下げた形の歩行者自転車専用のアンダーパスで、路面の東側部分は歩行者用、西側部分は青く塗られ自転車用となっています。いずれも幅員、高さともに十分で、いかにも最近開通したと思われる造作です。

激低っ!「提灯殺しのガード」が千葉にもあった! しかも「高速...の画像はこちら >>

アンダーパスの位置。左側はクルマも通れる。右側の地下が(Google earthを加工)

 じつは京葉JCTの整備以前、この場所にはより狭いながらも、クルマが通行可能なアンダーパスが通っていました。

その車高制限は1.8m、幅員制限は1.9mで、南から北への一方通行規制には「自転車を除く」の補助標識はなく、暗く狭いアンダーパス内でのクルマと自転車との事故が懸念されていたことが推察されます。

 そうしたスペックから、このガードを日常的に通行していたクルマはそれほど多くなかったと思われますが、幅員、高さにゆとりを持たせ、さらに歩行者自転車専用となったことは、安全を重視する上でも適切な判断だったのではないでしょうか。

 ただこのアンダーパスは、従来のものからさらに路面が掘り下げて作られているため、そのアプローチには長いスロープが新たに設けられています。そのスロープの上り下りを嫌ってか、京葉道路を南北方向に通り抜ける自転車の多くは、西側の天井の低いアンダーパスを選択し、天井に頭をぶつけないよう、身体をかがめるような姿勢で器用に走って行きます。

 このあたりは、より便利で安全な道路を提供するという行政の考えと、手近で便利なルートを選ぶという住民の意識とが、結果として乖離してしまったと言えるのでしょう。

 なお京葉JCTは先に述べたように2018年に供用がはじまったものの、現在は完成形ではなく、首都高湾岸線/東関東自動車道方面と、京葉道路千葉方面とをつなぐランプウェイが2026年2月の完成を目指して工事中です。

 周辺の一般道についても、この工事に関連した整備が、現在も続けられています。この地域の道路網が“最終形”となるには、もう少し時間がかかりそうです。

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