週末の夕方、木更津から川崎方面へ向かう東京湾アクアライン。「海ほたるまで120分」という非情な表示を見て、絶望した経験があるドライバーは多いことでしょう。
【デカッ!!】東京湾アクアライン至近にある「店舗数日本一のアウトレット」です
「車線がもっとあれば流れるのに……」そんな恨み節も聞こえてきそうですが、実はアクアラインには「6車線化できるポテンシャルがある」というハナシも。都市伝説のようですが、これは構造上の事実に基づいており、本当です。
まず、木更津側の橋梁部分「アクアブリッジ」。片側2車線の橋ですが、実は橋脚の両サイドには、将来的に道路を拡幅できるよう、そのためのスペースがあらかじめ確保されています。
橋の外側にツギハギするように床版を延ばせば、比較的容易に3車線化(往復6車線化)が可能な設計になっています。
では、川崎側の海底トンネル「アクアトンネル」はどうでしょうか。
こちらも実は、「将来的な6車線化」を想定した準備がなされています。ただし、それは「今のトンネルを広げる」ことではありません。現在の2本のトンネルに加え、なんと「3本目のトンネル」を新たに掘ることで実現する計画なのです。
その証拠に、浮島取付部や海ほたる、途中の換気施設「風の塔」には、3本目のトンネルを接続できるスペースがあらかじめ確保されています。
特に海ほたるの臨時駐車場の奥には、すでに約300mほど掘削された「3本目のトンネルの入口」が人知れず存在するといわれています。
つまり、橋は「横に広げる」、トンネルは「もう1本掘る」という壮大な構想のもと、物理的には6車線化への道が残されているのです。
その一方で、新たなトンネルを設置しようとすると莫大な工事費がかかるのも事実。それならば、今の広いトンネルのまま、線を引き直せば3車線になるのではないでしょうか。
線を引き直せば解決? それが無理なもっともな理由わざわざ掘らなくても、既存のトンネルで6車線化できないのでしょうか。
東京湾アクアラインの橋梁部(画像:写真AC)
確かにアクアトンネルは直径約14mという巨大な断面を持ち、車道の脇には広い路側帯があります。しかし、ここを車線に転用することは、安全上きわめて困難です。
この広い路側帯は、故障車が退避したり、火災などの緊急時に消防車や救急車が通行するための「命の道」です。これを削って車線にしてしまうと、万一の際に逃げ場がなくなり、大惨事になりかねません。
また「換気」の問題もあります。トンネル内の換気システムは現在の交通量を前提に設計されており、無理に車線を増やして排気ガスが増えれば、処理能力を超えてしまう恐れもあるのです。
今のトンネルをいじるのは危険。かといって、計画どおり「3本目のトンネル」を掘るとなれば、その工事費は数千億円規模に上ると予想されます。
さらに、仮にアクアライン本体を広げても、川崎側の出口である「浮島ジャンクション」が詰まってしまえば意味がありません。
かつて総事業費約1兆4400億円をかけて造られたアクアライン。その借金返済も続くなかで、さらなる巨額投資を行うのは現実的ではありません。
そこで現在、ハード(工事)ではなくソフト(制度)での解決策が進められています。それが「ロードプライシング(変動料金制)」です。混雑する時間帯の料金を上げ、空いている時間を安くすることで利用を分散させるこの取り組みは、一定の効果を上げています。
海ほたるに眠る「第3のトンネル」の入口。それはバブル期の夢の跡であると同時に、安全とコストの狭間で揺れる、現代のインフラ事情を物語っているのかもしれません。

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