1960年代後半のモンキーやダックスに象徴されるように、ホンダは「車載できるミニバイク」に対する強いこだわりがありました。クルマにミニバイクを乗せ、訪れた先でもバイクを楽しんでもらう――というコンセプトによるものでしたが、このこだわりは1980年代に入っても変わらず、2台の車載できるバイクを誕生させます。
【まさかの復活か】「ジャパンモビリティショー2023」でホンダが発表した“令和版 車載できるバイク”を写真で(画像)
1つは、1981(昭和56)年登場のモトコンポです。ホンダの四輪車・シティと同時に発売され、ハンドルを折りたたむことで、このリアハッチにすっぽり収まる仕様でした。
そして、もう1つが同年登場のスカッシュです。全長1280mmというミニサイズながら、フロアスペースを設けたスクーター仕様。2タイプあるうちの1つが、ハンドルを折りたたんで車載できる仕様でした。
モトコンポとスカッシュが発売された当時は、いわゆるHY戦争というホンダ、ヤマハの間で熾烈なシェア争いが繰り広げられていた時期です。特にヤマハのパッソルが草分けとなった日本におけるスクーター市場において、双方ともお互いを強く意識していた時代です。
ホンダは、シティにすっぽり車載できるモトコンポを発売する一方、おそらくは当時拡大し始めたスクーターでも、車載モデルを発売する強い意欲があったのではないかと思われます。
ただし、発売当時にこそスカッシュ、モトコンポは、「車載できる」構造によって兄弟的な存在として見られる向きがあったものの、結果的にモトコンポほどの注目度を得ることなく、スカッシュはモトコンポよりも早く生産終了に至りました。
あの「ジャンプ漫画」の扉絵にそんなスカッシュでしたが、ハンドル折りたたみ式のモデルのほか、キック式のスタンダード、セル式のデラックスといったモデルもありました。ズングリムックリとしたその個性的な外観は、漫画家・江口寿史氏の大ヒット作『ストップ!!ひばりくん』の扉絵にも描かれるなど、「かわいいミニバイク」としてのインパクトを十分に持っていたと思います。
また、1981(昭和56)年頃のスクーターとしては4種ものカラーバリエーションがあったのも斬新でした。
スカッシュは同時代の原付モデルの中ではヒットに至らず、ずば抜けた話題性も持っていませんでした。しかし、今もスカッシュの新古車を大切に販売する中古車店もあるなど、ユーザーによっては忘れることができない「小さな名車」として愛され続ける1台でもあるように感じます。
ところで、2023年に開催された「ジャパンモビリティショー2023」でホンダは、数十年ぶりに「ハンドルを折りたたむことで車載できるバイク」として、電動のMotocompactoおよびPocket Conpactの2台を発表しました。
このうち、Motocompactoは「モトコンポの再定義」として、アメリカで実売されました。一方のPocket Conceptはあくまでも参考出品。また、「かつて存在した車載できるバイクのリメイク」といった公式発表はなく、あくまでもゼロスタートの開発としています。
しかし、「Motocompactoと、さらにもう1台車載できるバイクを作った」という点からみると、どうしてもかつてのスカッシュの存在を思い出さずにはいられません。
Pocket Conceptの構造に、スカッシュ的な要素はほとんどありません。しかし、この開発においては、良い面でも悪い面でもスカッシュの影響が少なからずあったのではないか、と考えてしまうのは、うがち過ぎでしょうか。

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