北海道なら一般道も大差なし?

 多くの人が「北海道のドライブ」からイメージするのは、ひたすら真っ直ぐ、どこまでも続く道路ではないでしょうか。

【お金払う価値】これが圧巻の「北海道の高速道路除雪」です!(写真)

 実際に北海道には30km近い直線道路がありますし、5kmや10kmの一般道なら“そこらじゅうにある”というレベルです。

むしろ、地形による理由のほか「漫然運転を防止する」という安全上の配慮から、あえて曲線を取り入れている高速道路のほうが、かえって“カーブだらけ”とも言えます。

 そんな北海道の一般道は都市部など一部をのぞき交通量も少なく、高速道路、とくに片側1車線で最高速度70km/h制限の区間と比べれば、所要時間の差は大きくありません。「一般道でいいか」と思ってしまう場面も少なくないでしょう。

 しかし冬季において、とくに北海道外から旅行などで訪れ、レンタカーを運転するドライバーにとっては、“お金を払ってでも高速道路を使うべき理由”があります。

"ツルツル"が日常…一般道の危険性

 北海道の冬は厳しく、日中でも気温がプラスにならない「真冬日」が続きます。そのため道路上に降った雪は解けることなく、クルマの通行で踏み固められ、圧雪路や氷盤路となりがちです。

 冬の北海道の一般道では、こうした滑りやすい路面を、スタッドレスタイヤを履いたクルマが行き来しているのが日常の風景なのです。しかもその流れは50~60km/hであることが、ごくごく当たり前です。

 また路面の雪や氷の状況も均一ではありません。それは、日当たりがいい、悪いといった環境面によるものもありますし、限られたリソースで安全を最大公約数的に確保するため、カーブの部分だけ、下り坂の部分だけといった“メリハリ”を付けて除雪している場合もあります。

 そうした環境に馴染んだ地元のドライバーのなかを、雪道に慣れない旅行者が運転することが、どれだけ危険か、容易に想像できるでしょう。

高速道路のほうが“絶対に安心”のワケ

 一方、高速道路は北海道であっても、降った雪はできるだけすみやかに除雪され、降雪直後でなければ、クルマのわだち部分はアスファルトが見えるレベルまで雪が削られます。

また路面コンディションの変化も一般道に比べ少なく、安心して走ることができます。

「北海道の下道って“高速並み”だから高速道路いらないですよね...の画像はこちら >>

氷盤路となった国道239号。信号や対向右折車、店舗など路外施設に出入りするクルマでブレーキを踏むことは多い(植村祐介撮影)

 より気を付けなければならないのは、峠の区間です。一般道でもその多くは緩やかなカーブで結ばれた走りやすい道ですが、厳冬期にはちょっとした標高の上昇で雪が一気に深くなることもありますし、吹雪のときには視界が悪くなり、カーブの曲がり具合すらわかりにくくなります。

 一方、高速道路は標高が上がるような地形ではトンネルで抜けていきますし、本線ではカーブの曲率も一定に抑えられるだけでなく、視界が悪くなるところは標識や灯火類でのアシストが行われるため、走りやすさは一般道よりも数段上です。

 そして一般道と高速道路とで異なるのが、走行中の「ストップ&ゴー」の有無です。

 一般道はどれだけ空いているといっても、市街地を抜けるところでは信号が設置されています。そうした信号の手前はブレーキをかけるクルマのタイヤで磨かれてグリップ力が極端に下がるコンディションになっていることが往々にしてあります。

 50~60km/hの流れから赤信号に差しかかり、ブレーキを踏むと、真っ直ぐ走っているとき以上にスリップしやすくなります。また視界の悪いときは赤信号や停止車両に気付くのが遅れがちになりますし、自分自身は問題なく止まれても、後続車から追突されることもあり得ます。

 信号のない高速道路では、一般道に比べこうした事故につながるリスクははるかに低くなるのです。

料金は「安全への保険料」

 いったん事故に遭うと、たとえレンタカーそのものの損害は保険でカバーできたとしても、失う時間は計り知れないものがあります。

真冬の寒さのなか、現場検証などで屋外に長時間放りだされるのもリスクです。そうしたさまざまな不利益を考えれば、高速道路の通行料金は「安全に対しての保険料」として十分に納得できるものでしょう。

 なお北海道には、新直轄方式などで作られ、無料で通行できる高速道路が各所にあります。こうした“無料高速”の利用をためらう理由はありませんが、どこが無料でどこが有料かを調べるのはいささか面倒です。

 冬季の北海道での都市間移動については、基本的に「高速道路利用」を前提に、“そこが無料区間だったらラッキー”と思うくらいがちょうどいいのではないでしょうか。

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