最新技術を詰め込んだ艦ではあるが…

 スウェーデン国防省は2025年12月17日、ポーランドと潜水艦に関する覚書に署名し、潜水艦分野における防衛協力で新たな一歩を踏み出したと発表しました。

え、魚雷発射管から特殊部隊が!? これが、第5世代潜水艦の技術です(動画)

 この覚書は、スウェーデンのポール・ジョンソン国防相と、ポーランドのヴワディスワフ・コシニャク=カムィシュ副首相兼国防相によって署名されたもので、今後はスウェーデン製潜水艦3隻のポーランドへの売却に向けた計画を進めることになります。

 この合意は、11月26日にポーランド政府が発表した「潜水艦3隻を調達する」という決定に基づくもので、スウェーデンにとって過去最大級の海軍輸出契約の一つとなる見込みです。

 ポーランド向けに建造される潜水艦は、スウェーデンの防衛企業サーブが開発する「A26型潜水艦」となる見込みです。同艦についてサーブは、「世界初の第5世代潜水艦」としてアピールしています。

 A26型は、特殊素材や独特の船体デザインを採用することで、潜水艦が探知される要因となる磁気・音響・赤外線・電磁波などの発生を大幅に低減しており、極めて高い静音性を備えた艦であるとされています。

 同艦は、バルト海など水深の浅い海域での運用を想定して設計されており、全長約66メートルの比較的小型な潜水艦です。乗員は26人での運用が可能とされ、少人数でも任務遂行が可能な設計となっています。

 また、対艦・対潜戦に加え、特殊部隊の投入、機雷敷設、無人潜水機(UUV)の運用など、多様な任務に対応するため、モジュール設計が採用されている点も特徴です。

 さらに、モジュール設計に加えて、艦首には魚雷発射管のほか、「マルチミッションポータル」と呼ばれる特殊装備が備えられています。これは直径1.5メートルの潜水ロックで、無人潜水艇や潜水要員を収容した状態で注水後にハッチを開放し、発進させることが可能です。これにより、海底ケーブルやパイプラインなどのインフラ防護、あるいは損傷箇所の点検・修理といった任務を遂行できます。

 こうした海底での任務を支援するため、A26型は艦底を海底に安定して着底させることが可能な設計となっています。着底自体は他の潜水艦でも可能ですが、着底運用を前提とした任務設計がなされている点において、同艦は画期的であるといえます。

 ただし、スウェーデン海軍向けに発注されているA26型潜水艦も、現時点ではまだ就役していません。当初は2023年の引き渡しが予定されていましたが、安全性向上に伴うコスト増加や建造の難航により納期が遅延しています。一部報道では、納入は2031年頃になるとも伝えられており、ポーランド向けの引き渡しについても大幅に遅れる可能性があります。

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