2024年海外デビュー

 中国の150席級旅客機C919は「海外デビュー」してから、まもなく2年になります。これまでC919は「メイド・イン・チャイナ」を引っ提げ、海外でかなり積極的にアピールする姿が見られました。

この2年間は中国とC919にとって満足できるものだったのか、さらに振り返りつつ3年目以降はどう進むのか、分析していこうと思います。

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 C919が海外デビューしたのは2024年2月。前年の2023年には助走と言える、活発な動きが既に伝えられていました。2023年5月、C919は中国国内で商業運航を開始し、これに先立つ4月は一回り小型のリージョナル旅客機「C909(旧称ARJ21)」も、インドネシア初めて商業運航に入り、“海外デビュー”を果たしました。

 そして、2024年2月のシンガポール航空ショーではC919が、C909とともに海外デビューしました。この時、メーカーのCOMAC(中国商用飛機有限公司)は地上展示と飛行展示に両機を一気に計5機も出展しました。

 ボーイングとエアバスも一度に同等の機数を展示した例はありましたが、これはパリ(フランス)やファンボロー(イギリス)など世界有数の規模を持つ航空ショーでの話です。シンガポール航空ショーの展示会場は欧州ほど広くないため、これは異例のことといえるでしょう。このときの中国が、旅客機市場の参入への野心を示していたことを示すエピソードといえそうです。

 その後COMACはC919の短胴型や長胴型といったバリエーションも発表し販路拡大にいそしみ、直近ではブルネイでの導入が伝えられ、2025年11月にはUAE(アラブ首長国連邦)のドバイ航空ショーで中東デビューも飾りました。

 とはいえ、その後、中国以外の航空会社がC919をどれほど購入したでしょうか。実際は“堅調”とは程遠い状況にあると言わざるを得ません。

やはり、アメリカと欧州での商業飛行に必要な認証を取っていないため、世界が「実用に足る」と注視するまでいっていないといえそうです。

 さらにC919は納入の遅れも伝えられ、2025年の生産目標は75機から約25機に下方修正したと伝えられています。これはC919がアメリカ製の部品も使用していることからトランプ大統領による関税問題も絡んでもいるためですが、中国がC919のライバルと目しているボーイングのベストセラー旅客機「737」シリーズの生産率が回復しているのとは対照的です。

ぜんっぜん売れない「C919」、今後も海外アピールするの?

 中国は今後、C919の海外セールスへどれだけ積極的に動くのでしょうか。それは2026年2月に開かれる、海外デビューの場だったシンガポール航空ショーから占うことができると筆者は考えています。

 同ショーでもし、前回と同じようにC909も含めて5機程度を展示した場合、中国は、民間機市場を拡大する意欲を益々向上させていると見ることができるでしょう。一方、前回駐機場で展示されたのは計3機でした。ここは先述の世界的航空ショーよりスペースが狭いため、これ以上の展示は窮屈感が出て見栄えが悪くなり、かえって訴求力は落ちると見られます。

 一方で、前回より展示機数が少なかった場合はどう考えるべきでしょうか。筆者はこのケースにおいてはトーンダウンではなく、意欲は変わらないと見るべきと筆者は考えます。そもそも民間機の展示機数はシンガポール航空ショー級なら1機か2機なので、むしろ2024年は「デビューの年だから多かった」と説明できます。海外進出してわずか2年であきらめるのも考えにくくあります。

 そして中国はC919だけではなく、現在より大型のC929、さらに大型のC939の実用化の検討を進めており、同国は航空機産業を国家事業と位置付けています。

 もしかすると今後、COMACがボーイングやエアバスに肩を並べ、世界の旅客機開発競争が“三つ巴”時代が近づいているのかもしれません。

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