「空中分解」しちゃった…? 独仏西の次世代戦闘機「FCAS」計画

ドイツの防衛メディア「hartpunkt」は2025年12月30日、同国国防省報道官の話として、ドイツとフランス、スペインによる新戦闘航空システム「FCAS」(フランス語ではSCAF)に関するドイツの意思決定が、事実上無期限延期になったと報じました。このことで、日本がイギリス・イタリアと進める次期戦闘機の開発プログラム「GCAP」が新たな局面を迎える可能性があります。

【無かったコトになってる…?】これが「FCAS」の戦闘機が載る“はず”の空母の最新イメージです!(写真)

 FCASはフランス航空宇宙軍が運用しているラファール戦闘機と、ドイツ空軍およびスペイン航空宇宙軍が運用しているユーロファイターを後継する有人戦闘機、加えて有人航空機を支援する各種UAS(無人航空機システム)を共同開発するプログラムです。3国は2019年に共同開発へ合意。その後、プログラムは第1段階(フェーズ1)に進んだのですが、2025年中に予定されていた第2段階(フェーズ2)に移行する参加国の署名に向けた合意形成は難航を極めました。

 ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、2025年中の署名に意欲を見せ、同年12月18日と19日にベルギーのブリュッセルで開催されたEU(ヨーロッパ連合)の理事会で、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相とフランスのエマニュエル・マクロン大統領の首脳会談に期待していたようです。しかし、この首脳会談ではドイツ・フランス二国間の包括的な外交・安全保障についての議論は行われたものの、FCASについては議論の対象にできるほどの進展は無いとの理由から議題とはならず、ピストリウス国防相の期待はかなわないまま、2026年を迎えてしまいました。

 アメリカのニュースメディア「ポリティコ」は2025年9月、年内に第2段階へ進む署名が行われない限り、ドイツは共同開発計画から離脱すると報じています。

 他方、フランスのマクロン大統領は12月21日に、フランス海軍が現在運用している原子力空母「シャルル・ド・ゴール」を後継する新型原子力空母「PANG」の建造計画を実行すると述べています。

 PANGの建造を主導するフランスの造船企業ナヴァル・グループはマクロン大統領の声明に合わせてPANGの最新イメージCGを発表していますが、CGに描かれているPANGの飛行甲板にはダッソー・ラファールM戦闘機と、フランスが独自に開発している艦載型UAS(無人航空機システム)の姿のみが描かれていました。2020年12月にフランス軍事省が発表したPANGのイメージCGで飛行甲板上に描かれていたFCASの艦載機型は、姿を消しています。

 2026年1月9日現在、3か国の政府からFCASに関する公式発表は行われていませんが、FCASが第2段階に進むのは、かなり難しくなってきているのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

GCAPは「参加国が増えるほど良い」?

 FCASの共同開発中止を見込んで、スウェーデンのサーブはドイツに対して、新戦闘航空システムの共同開発を持ちかけているようですが、GCAPにも動きがあります。

日英伊の新戦闘機開発「新メンバー」が続々!? 複数国が熱ぅ~...の画像はこちら >>

日英伊で進めるGCAPの戦闘機の最新イメージ(画像:イギリス空軍)

 イタリアのグイード・クロセット国防相は、2025年12月4日におこなわれた議会公聴会で、GCAPへの参加国が増えれば増えるほど投資額の上限が大きくなり、より多くの人材を引き付けることができて、経済的利益が高まるとの見解を示しました。

そのうえで、ドイツとオーストラリアがGCAPに参加する可能性があると述べています。

 GCAPには、サウジアラビアも参加に意欲を見せています。GCAP計画への新規メンバーの加入による開発期間の長期化や、サウジアラビアがイスラム教シーア派などへの武力行使を行っていることから、日本はサウジアラビアの加入に消極的な姿勢を示していますが、他方でイギリスとイタリアは加入に前向きな姿勢を示しています。とりわけイタリアのジョルジャ・メローニ首相は2025年1月に、「すぐにではない」という条件付きながら、サウジアラビアの参加を支持する意向を示しています。

 メローニ首相の言う「すぐにではない」は、サウジアラビアの航空・防衛産業がイタリアの大手防衛企業であるレオナルドの航空機や、同社も資本参加しているNHインダストリーズのヘリコプターなどを導入し、その生産に関与して経験を蓄積してから――ということを意味しています。

 この場合、サウジアラビアが参加するとしても、かなり先の話になると思われますが、2025年12月1日付のブルームバーグは、サウジアラビアの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド」が、レオナルドの航空機構造部門への出資交渉を行っていると報じています。この話がまとまるようであれば、イタリアの支持を背景とするサウジアラビアの参加は前倒しされる可能性があると筆者は思います。

 日本とイギリス、イタリアが2023年12月に、GCAPを管理する国際機関「GIGO」の設立する条約に署名してから、2年が経過しています。3か国の思惑の違いなどから、まだ開発体制は盤石とは言えませんが、2025年6月には機体の開発を担当する合弁企業「エッジウィング」が設立されるなど、少なくともFCASに比べれば計画は順調に進んでいると見てよいでしょう。

 このため海外メディアでは、仮にドイツやオーストラリア、サウジアラビアなどが新規に加入したとしても、及ぼせる影響力と産業的収益は限定的なものになるとの見方が多数を占めています。ただそのような形であったとしても、GCAPは日英伊3か国のプログラムから、より広範なプログラムへと変貌していく可能性が生じてきているのはたしかだと筆者は思います。

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