決めているのは「警察官」じゃない?

 気持ちよくクルマを走らせているとき、ふと現れる速度標識。「こんなに道が広いのに、なぜ40キロ制限なのか」と首をかしげたくなる場所や、逆に取り締まりを受けて「警察が勝手に決めたルールだろ」と文句を言いたくなる場面があるかもしれません。

【台座には超有名“ネズミ”も】静岡県にある「カオナシ標識」です(写真で見る)

 しかし、実はこの制限速度を決めているのは、地元の警察署でもなければ、都道府県警察でもありません。決定権を持っているのは、各都道府県の「公安委員会」です。

 あまり聞き慣れない名称ですが、これは警察の運営が独善的にならないよう管理する機関で、知事が任命した医師や弁護士、地元経済界の代表など、いわば「市民の代表」といえる有識者たちで構成されています。

 つまり建前上は、私たち市民の代表が「この道路はこれくらいが適切だ」と判断して決めていることになるのです。

 そもそも、道路の最高速度には2種類あります。

 ひとつは「法定速度」。これは標識がない場所での決まりで、法令によって一般道なら60km/h、高速道路なら100km/hと一律に決まっています。

 もうひとつが「指定速度」。標識や道路標示で数字が示されているもので、道路の状況に応じて、公安委員会が法定速度よりも低く、あるいは高く設定したものです。私たちが普段気にしているのは、主にこちらの指定速度でしょう。

 では、市民の代表である公安委員会は、どのような基準で速度を決めているのでしょうか。けっして「なんとなく」や「意地悪」で決めているわけではありません。

 警察庁が定めた『交通規制基準』という明確なマニュアルが存在し、それに従って科学的に算出されています。

「120キロ道路」が生まれた納得の理由

 速度を決める際に重視されるのが、カーブの大きさなどの「道路構造」や、過去の「事故発生状況」、そして「実勢速度」というデータです。

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一部の高速道路で120km/h制限に引き上げられた理由とは?(画像:写真AC)

 実勢速度とは、実際にその道路を走っているクルマのスピードです。

 規制基準では「85パーセンタイル速度」という考え方が用いられています。これは、その道路を走るクルマの85%が含まれるスピード、すなわち「大多数のドライバーが安全だと感じて自然に出している速度」を基準にするというものです。

 かつては「速度を下げれば事故は減る」という考え方が主流でした。しかし近年は、実態に合わない厳しすぎる規制は、かえって無理な追い越しや急ブレーキを誘発し危険であるため、実勢速度に合わせて規制を見直すほうが安全だという考え方にシフトしています。

 この考え方が具現化したのが、新東名高速道路などで実現した「最高速度120km/h」の区間です。

 新東名は、もともと設計速度120km/hで作られた高規格な道路でしたが、当初は法律通りの100km/hに抑えられていました。しかし、警察庁が試行運用を行った結果、120km/hに引き上げても死傷事故の件数に大きな変化はないことが確認されました。

 道路の実力とドライバーの感覚に見合ったルールに変えることで、ストレスの少ないスムーズな交通を実現したのです。

 ただし、120km/h区間でも大型トラックなどの最高速度は90km/h(2024年4月に80km/hから引き上げ)に制限されています。

速度差が大きくなるため、遅い車は左車線を走行するという「キープレフト」の原則がより重要になります。

 制限速度は、単なる取り締まりの道具ではなく、みんなが安全に走れるための「共通言語」のようなものです。

 もちろん「120km/h出せる」というのは、条件が良い時の上限であり、出さなきゃいけないわけではありません。最終的な安全のアクセルをコントロールするのは、ドライバーである私たち自身なのは、言うまでもないでしょう。

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