道路工事の現場で、湯気を上げている白線引きの作業を見たことはないでしょうか。
【工事現場でザーーっ!】これが白線の「塗料づくり」の様子です(写真で見る)
あの白線、実はペンキではなく「溶融(ようゆう)系塗料」と呼ばれる特殊な樹脂です。
常温ではサラサラの粉末ですが、専用の釜で180度から200度という高温に熱することで、ようやくドロドロの液体になります。その粘り気は、例えるならハチミツや溶けたチーズのようなもの。冷えるとプラスチックのようにカチカチに固まる性質を持っています。
なぜ、わざわざそんな扱いにくい高温の塗料を使うのでしょうか。
最大の理由は“速さ”です。普通のペンキでは乾くのに時間がかかり、その間ずっと通行止めにしなければならず、大渋滞を引き起こしてしまいます。
しかし、この溶融系塗料なら「冷めれば終わり」です。
冬場ならわずか3分、夏場でも水をかけるなどすれば10分程度で固まり、車が乗っても大丈夫になります。溶融系塗料を使うことで、信号待ちの間で工事を完了できるほどのスピード勝負が可能となっています。
アナログすぎる“人力プリンター”の超絶技巧この激熱の塗料を路面に塗る機械にも、驚きの職人技が隠されています。
「止まれ」はどうやって描かれている?(画像:写真AC)
作業員が押している箱のような機械は「手押しライナー」と呼ばれます。全自動のハイテク機械かと思いきや、操作は極めてアナログです。
「シュー」と呼ばれる鉄の箱部分から塗料を流し出すのですが、作業員は歩きながら手元のレバーでスリット(隙間)を微妙に開閉し、線の厚みや直線を調整しています。歩く速度がそのまま印刷クオリティになる、まさに「人力プリンター」と形容できる作業です。
さらに凄いのが、「止まれ」などの複雑な文字を書く場合です。
状況にもよりますが、機械を使わず、職人技で行うことが間々あります。この場合、路面に粘着テープなどで枠を作り、そこへひしゃくで熱々の塗料を流し込みます。そして、左官屋さんが使うようなコテを使い、手作業で平らに仕上げていくのです。
また、夜になると白線がライトに反射してキラキラ光るのは、塗料の中に極小の”ガラスビーズ”が混ぜ込まれているからです。
施工の直後にも上からビーズを振りかけますが、それだけでは表面が削れると光らなくなってしまいます。
そこで、あらかじめ粉の中に20から23%程度(JIS規格)のビーズを練り込んでおくことで、表面がすり減っても中から新しいビーズが現れる”金太郎飴”のような仕掛けになっているのです。
何気なく踏んでいる道路の白線ですが、そこには熱とスピード、そして職人の緻密な技が詰め込まれていると言えるでしょう。

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