現在の日本のガソリンスタンドは「レギュラー」「ハイオク」「軽油」が基本ですが、かつては金属の「鉛」が含まれた「有鉛ガソリン」が広く売られていました。
【写真】懐かしい? 昭和50年代までは普通に見かけた「有鉛」証明です
当時は車体に「有鉛」や「無鉛」、「高速有鉛」といった使用燃料を示すステッカーが貼られて区別されていました。
いつ頃からこうした分類がなくなったのかというと、日本では1975(昭和50)年2月から無鉛化が進み、1986(昭和61)年までに公道向けガソリンの無鉛化が完了したとされています。世界的には、2021年にアルジェリアでの販売が終了し、公道向けの有鉛ガソリンは終焉したと国連が発表しています。
なぜ有害な鉛をガソリンに入れていたのか、その理由は意外なものでした。実は「四エチル鉛」は、エンジンにとって「安くて効果の高い薬」のような役割を果たしていたからです。
四エチル鉛は、ガソリンの「オクタン価」を高めてノッキングを抑える「アンチノック剤」として、エンジンの出力を支えていました。さらに鉛の成分は、エンジンの弁が閉まるときに金属同士がぶつかる衝撃を和らげる“クッション”としても機能していました。
しかし、鉛には毒性があり、公害や健康被害が明らかになりました。さらに排ガス浄化の触媒を劣化させるため、環境保護の面でも大きな問題になったのです。
こうしてガソリンから鉛が抜かれることになりましたが、ここで困ったのが有鉛ガソリンを必要としていた「旧車」たちでした。
鉛無しのガソリンでも走れるワケ有鉛ガソリンを前提とした古い車に、無鉛ガソリンなど現在流通しているような燃料を入れると、エンジンの部品である「バルブシート」が削れてしまう「バルブシート・リセッション」という現象が起きる可能性があります。
現在は有鉛ガソリンの販売はない(画像:写真AC)
鉛の保護膜がないため、金属同士の衝撃で少しずつ削られてしまうのです。特に高速走行や高負荷が続くような過酷な条件では、摩耗が進みやすいとされています。
それでも、今なお街中で元気に走る旧車たちはたくさん存在します。どうやって前述したような課題をクリアーしているかというと、ひとつは給油時に混ぜる「添加剤」です。これを加えることで、鉛と同じようなクッション機能を補完しています。
また、エンジンを修理する際に、無鉛ガソリンでも削れない「ステンレス合金」などの硬い材質のパーツに交換し、現代の燃料に合わせた仕様に作り変える根本的な解決策を採る人もいます。
もっとも身近な対策は、日頃の運転の仕方にあります。SNSなどでは、急加速を控えたり、低負荷での運転を心がけたりする「優しい運転」で物理的なストレスを減らそうとするオーナーの工夫も見られます。
かつての常識だった有鉛ガソリンは消えましたが、それを支えた技術や文化は、形を変えながら現在も大切に受け継がれています。
こうした知恵と工夫も、ある意味で旧車を乗り続けるオーナーたちの「愛」と言えるのかもしれません。

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