イギリス空軍ではこれまで、戦闘機パイロットを育成するための練習機として、長年にわたりBAE「ホーク」を運用してきました。1976(昭和51)年からイギリス空軍で運用が開始された同機は、パイロットを教育する訓練部隊のほか、「レッドアローズ」の愛称で世界的に有名なイギリス空軍のアクロバット飛行チームである王立空軍アクロバットチームでも、1979(昭和54)年から現在に至るまで、じつに40年以上にわたり使用されています。
【芦屋や入間にいそう!】日の丸+赤白塗装の「T-4後継機」イメージです(写真で見る)
現在、イギリス空軍では初期型の「ホーク」T1をレッドアローズで運用しているほか、訓練部隊では能力向上型であるT2を2012(平成24)年から運用しています。しかし、T1については機体の老朽化が著しく2030年までに退役を予定しているほか、T2に関しても2040年までは現役に留まるとされているものの、搭載するエンジンの信頼性に起因する問題により、訓練に支障をきたしているといいます。
そこで、2025年6月にイギリス国防省が公表した「戦略防衛見直し(Strategic Defence Review)2025」では、ホークT1およびT2について「費用対効果の高い高速ジェット練習機に置き換えられるべき」との一文が明記されました。これを受けて、現在ホーク後継機に関する選定作業の準備が進められています。
このホーク後継機には、アメリカのボーイング社がスウェーデンのサーブと共同開発したT-7A「レッドホーク」を、イギリスの大手防衛関連企業であるBAEシステムズが両社とタッグを組んで提案することを発表しています。また、イタリアのレオナルド社も、各国で幅広く採用されているM-346を提案するとみられています。
一方で、イギリスのとある新興企業からも興味深い機体が提案されています。それが、エアラリス社(Aeralis)です。2016(平成28)年に設立された同社は、ホーク後継機に興味を示している企業の中で唯一、イギリス国内で設計・製造される国産機を提案しています。この機体はモジュール式となっているのが特徴で、共通の胴体部分(CCF)に、カスタマイズ可能な主翼やエンジン、コクピット、電子機器、センサー、兵装などをはめ込むことで、運用国それぞれのニーズに合致した機体を作り上げることができます。
このやり方だと、練習機が欲しければそれに即した構成で機体を組み上げられ、ある程度の戦闘能力を持った軽戦闘機が欲しければセンサーや武装を付け足し、さらに無人機として運用したければコクピットと電子機器類を変更すれば、すべて事足りるということです。共通機体を一度導入するだけで幅広いニーズに応えられるとなれば、維持整備や運用の面で効率化を図ることが可能です。
エアラリス社では、このモジュール式機体を含めた革新的な機体設計・開発システムを独自に構築しています。その核となっているのが、「デジタル・エンジニアリング」の活用です。デジタル・エンジニアリングとは、設計から製造、さらには品質管理まで、あらゆる段階でデジタル技術を活用する開発手法のことです。
エアラリス社が開発している「モジュラージェット」は、機体の構成要素を自由に組み合わせることが出来る(画像:エアラリス)。
たとえばエアラリス社では、機体設計の際に「デジタル・ツイン」と呼ばれる技術を活用しています。デジタル・ツインとは、実物のシステムや機体の詳細な仮想モデルを作成し、その挙動をデジタル空間(仮想空間)で再現・検証する手法のことです。コンピューター上であらかじめ仮想試験を重ねることで、試作機を作ってから問題点が発覚するというリスクを減らし、開発コストや期間の効率化につなげています。
また、エアラリス社ではデジタル・ツインを使って「実機が配備される前にその運用結果を予測する」という仕組みも導入しています。これは、設計段階のデータから各機体の運用シナリオを人工知能(AI)によって仮想的に再現し、機体配備後の整備状況や可動率、コスト推移を予測するというものです。開発段階で既にどの程度の整備体制が必要か、どの部品がボトルネックになるか、といった運用上の重要事項をデータに基づき設計に反映することが可能となり、運用効率が最適化されるようにあらかじめ機体設計を行えるようになるのです。
このデジタル・ツインと、VRゴーグルなどのツールを組み合わせることで、機体を整備する際の機内へのアクセスのしやすさを検証したり、あるいはハッチやパネルなどの位置を調整したりして、「必要な場所に整備員の手が届かない」といった致命的な設計ミスを未然に防ぐことも可能です。つまり、デジタル技術を使って、実機を製作する前に徹底的に問題を洗い出して解決し、最速で機体設計を行おうというわけです。
加えて、エアラリス社では上記のデジタル・ツインで作成した3Dモデルを含め、部品表や開発時の要件定義書など、あらゆるデータを単一のデジタル・データベースで一元管理しています。このデータベースには、関連企業はもちろん運用者である軍や政府関係者、機体の認証当局など、機体設計・製造・運用の関係者によるアクセスが許されます。たとえば、設計段階で機体に変更が加えられると、その情報は瞬時にデータベースに保管されているあらゆるデータに反映され、先述したデジタル・ツインにも変更が加えられます。
さらに、機体の運用で判明した不具合情報も即座に共有され、それに応じて部品の設計変更などを行うことが可能となります。これにより、複数企業がリアルタイムで共同設計できる体制が構築され、データの受け渡しミスやタイムラグの発生を防ぐことが出来るのです。これにより、エアラリス社では従来長い年月をかけて行われてきた航空機に設計から製造に至る一連の流れを、大幅に短縮することを目指しています。
実は日本にも熱視線 T-4後継機を「日英タッグ」でまた、エアラリス社が開発中の練習機には、先進的な機上シミュレーターが搭載されることとされています。これは、練習機上で実戦的な訓練を仮想的に行うためのもので、たとえばF-35などの第5世代戦闘機が有するレーダーや兵装を仮想的に装備して、敵機との模擬戦闘などを行うことができます。そうすれば、運用コストの高い実物の戦闘機を飛行させることなく、それと全く同じ環境を安価な練習機で再現してパイロットの訓練を実施することができるわけです。
エアラリス社は、おそらく日本企業とタッグを組んでT-4後継機に挑戦するとみられる(画像:エアラリス)。
こうしたデジタル技術の活用や次世代訓練システムの導入は、まさにイギリス空軍がホーク後継機に求めているものと合致しており、さらにイギリス国産の練習機開発および製造は、近年独自の航空機開発が行われてこなかったイギリスにとっての悲願でもあります。そのため、エアラリス社はイギリスの航空産業界に新たな活気と雇用を生み出す存在として、注目されているのです。
そして、このエアラリス社、じつは日本にとっても重要な存在となるかもしれません。というのも、航空自衛隊が運用しているT-4練習機の後継機選定に、同社も関心を寄せているからです。
T-4は、現在航空自衛隊が運用している中等練習機で、連絡機としても使用されるため教育部隊に限らず、全国の航空基地に幅広く配備されています。とはいえ、量産機の納入開始は1988(昭和63)年と、すでに運用開始から40年近い年月が経っているため、航空自衛隊では後継に関して、すでに検討を始めています。
おそらく、エアラリス社としては単身で日本市場に乗り込むのではなく、日本でパートナーとなる航空関連企業を見つけることになると筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。そうでなければ、機体製造拠点を設けることはもちろん、そもそも日本市場への参入そのものが困難だからです。
そこで、エアラリス社が誇る機体のモジュラー設計が重要になると予想されます。たとえば、胴体部はエアラリス社が担当するとして、その他の電子機器類やセンサー、コクピットなどを日本企業が担当することにすれば、自社の強みを生かした協業が実現することとなり、双方にとってウィンウィンの機体が完成することになります。
ちょうど、冒頭で触れた通りエアラリス社はイギリス空軍向けのホーク後継機や、フランス航空宇宙軍のアクロバットチーム「パトルイユ・ド・フランス」が使用するアルファジェットの後継機について、関心を示しています。こうした動きを鑑みると、日本に対してもこれらと足並みをそろえる形で機体提案を行う可能性は高いでしょう。
じつはGCAPにも関係大アリ! 日本が「出遅れている分野」を補完できるかもまた、設計および製造に際して、エアラリス社の先進的なデジタル技術の恩恵を受けられることも、日本側にとっては大きなメリットになります。というのも、同社は現在日本とイギリスがともにプログラム参加国となっている次世代戦闘機開発計画「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」において、デジタル・エンジニアリングの側面から協力しているためです。
2025年に開催されたGCAPのフルスケールモデル(画像:在英日本大使公式X)。
2022年12月に、イギリス国防省はエアラリス社との間で900万ポンド(当時のレートで約14億8000万円)にも及ぶ契約を締結しました。この契約は、「Digital Aviation Learning from Experience(デジタル航空における経験からの学習)」と命名されており、その目的は、同月に発表されたGCAP開発の初期段階において、エアラリス社のデジタル・エンジニアリングに関する知見やデータを国防省が共有・活用することにあります。
具体的な内容は不明ながら、おそらくエアラリス社が完全に統合されたデジタル手法で機体設計から開発、認証を進める中で生み出された各種情報(モデル設計データ、シミュレーション結果、開発プロセスの教訓など)に国防省がアクセスし、それを将来の他の航空機開発プログラムに役立てることが狙いとみられます。手短に言えば、デジタル・エンジニアリングから得られる「経験」を分析・応用するための契約、ということになります。
つまり、GCAPの開発において用いられるデジタル・エンジニアリングの手法は、全く同じものではないにせよ、その基盤にエアラリス社のシステムが活用されることになると考えられるわけです。
GCAPは、それまでに前例のない日本・イギリス・イタリアによる第6世代戦闘機の開発計画です。しかも、2035年には配備を開始するという野心的な開発スケジュールが設定されています。となると、当然スケジュール遅延の回避と開発コスト上昇をいかにして抑えるかが肝要となり、そこでイギリス側が目を付けたのがデジタル・エンジニアリングです。
筆者の取材では、GCAPは完全なデジタル・エンジニアリングによる開発が進められることはほぼ決定的ながら、日本がその分野で出遅れていることを懸念する声が多く聞かれます。そこで、まずはT-4後継機において先進的な次世代のデジタル・エンジニアリングに触れることこそが、日本にとって必要なことなのではないかと、筆者は一連の流れを鑑みたうえで考えます。

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