2月上旬にシンガポールで開催された航空防衛展示会「シンガポールエアショー2026」にて、同国の防衛企業であるSTエンジニアリングがハイブリッド電気駆動の装輪式歩兵戦闘車(IFV)「テレックスS5 HED」を初公開しました。戦車といえば「ディーゼル式」での駆動が一般的でしたが、それを電動化するのにはどういったメリットがあるのでしょうか。
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HEDは「Hybrid Electric Drive(ハイブリッド電気駆動)」の頭文字を取ったもので、その名前のとおり、このIFVはハイブリッド電動駆動で動くことを意味しています。
ディーゼル式エンジンは車体前部に搭載され、主に発電機として機能し、発電された電気は車体下部のモーターを駆動させて走行します。走行性能は通常のディーゼルエンジン式と比べてスペック上は遜色なく、自重35トンの車両を最大時速120kmで加速させることができます。
また、発電された電力は車体後部の大容量リチウムイオンバッテリーにも蓄電され、エンジンを停止させてもバッテリー内の電力だけで走行することも可能(バッテリーのみで最大50キロメートル走行可能)で、熱源や騒音の発生を低減させて活動を行なうこともできます。
ハイブリッド車といえば、車業界においては従来型内燃式エンジンとバッテリー駆動を組み合わせたものが一般的で、その目的は環境への低負荷、騒音低減、燃費向上による利便性向上などです。しかし、軍用車両である「テレックスS5 HED」には、これらハイブリッド車とは違った軍事的な利点があり、それこそがハイブリッド電動装甲車が生まれた理由だといえるでしょう。
「ハイブリッド電動戦車」そのメリットとは「テレックスS5 HED」のエンジンは高い発電能力があり、通常型テレックスS5の発電量が20kWに対して、こちらは最高で400kWもの電力を生み出すことができます。これは車両を走らせるモーターを動かすだけでなく、車内に搭載された各種電子機器やコンピューターを動かすのに活用されます。
車体上部に搭載された砲塔は遠隔操作で動き、内部に装備されたレオナルド社製30ミリ機関砲「X-Gun」も油圧式ではなく電動式です。さらに砲塔の周囲を囲む様に対無人機用レーダーが搭載されており、近年の戦場で脅威となる無人機やドローンの警戒・迎撃能力を有しています。
車内の乗員席の目の前には従来式のペリスコープに代わってカメラ映像をパノラマ化した大画面のモニターが装備されており、さらにネットワーク能力によって他の車両や他部隊と連携できるほか、車両から発進させたドローンや無人車両(UGV)を指揮・管制することも可能です。
つまり、「テレックスS5 HED」が活躍する今後の地上戦では、車両のデジタル化はもちろんのこと、膨大な数の電子機器や無人兵器が活躍し、それらを動かすためにはこれまでにない大電力が必要となるのです。
現時点で「テレックスS5 HED」の採用を決めた国はありませんが、STエンジニアリング社では開発自体は完了しており、顧客となる国があれば生産を行なうことが可能だとしています。また、HEDの技術自体は、IFVだけでなく装甲車など他の軍用車両をハイブリッド電気駆動にすることもできるそうです。
ハイブリッド電動化といえば、一般には低燃費やエコといったイメージが強く、戦闘車両がそのような対応を行なうことに疑問を抱く人も多いでしょう。しかし、近年のドローンやネットワーク戦の普及によって地上戦闘にも大きな変革の流れが起きており、ハイブリッド電動化は今後増大するであろう戦場の電力需要に応えるための技術革新のひとつだといえるでしょう。

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