ステルス機は「透明人間」ではない 角度を計算された鏡の秘密

 F-35「ライトニングII」やF-22「ラプター」など、最新の戦闘機には必須の能力となりつつあるのが「ステルス性能」です。

【メーターがない…】これが最新戦闘機F-35のコックピットです(写真)

 この能力は、一般的には「レーダーに全く映らない、忍者のような魔法の能力」と思われている向きがありますが、実は違います。

正しくは「レーダー網をすり抜けるための徹底的な工夫」をしている機体であり、決して電波で完全に捉えられないわけではありません。

 レーダーの仕組みは、暗闇で懐中電灯を振り回し、対象物に光が当たって眼球に跳ね返ってくることで「発見」できる原理に似ています。普通の戦闘機が、光をあちこちに乱反射させる「デコボコした岩」だとすれば、ステルス機は緻密に角度を計算された「鏡」のようなものです。

 懐中電灯(レーダー波)を向けられても、その特殊な形状によって、電波を送信元とはまったく別の方向へ受け流してしまいます。そのため、送信側には反射が戻ってこず、コンソール画面上からは消えてしまったように見えるのです。

 この映り込みにくさを数値化したものが、RCS(レーダー反射断面積)です。ステルス機は機体の形状設計に加え、反射を抑えるためのコーティングや、RAM(電波吸収材)などを組み合わせ、レーダーに返る成分を極限まで減らす工夫が盛り込まれています。

 こうした見えにくさを保つための表面管理や補修は、非常に重要な整備項目になり得るとされています。

街中の電波を味方にする逆転の発想「ステルス破り」の最新技術

 ステルス機が電波を「別の方向」へ受け流すのであれば、送信機とは別の場所に受信機を置いて、別の地点で反射を拾えばいい。この送受分離の発想に近いのが「バイスタティック・レーダー」です。

戦闘機の「ステルス化」は無敵じゃない!?「ステルス破り」狙う...の画像はこちら >>

F-22「ラプター」(画像:写真AC)

 さらに、この考え方を「自らレーダー電波を出さない」方向へと推し進めたものに「パッシブ・レーダー(受動レーダー)」があります。

 空の上には、すでにテレビ放送やスマートフォンの通信電波が網の目のように飛び交っています。

ステルス機がそこを通り過ぎると、これらの民間電波がわずかに乱れます。パッシブ・レーダーは自ら電波を出さずにこっそり見張り、この電波の乱れを高度な計算で分析して、ステルス機の位置を逆算するのです。

 実際にドイツの企業が、このパッシブ・レーダーを用いて「F-35を追跡できた」と主張し、大きな話題となったことがあります。

 ただ、現地の報道では、当時のF-35は平時の飛行安全確保などのために「レーダー反射器(リフレクター)」を取り付けていた可能性も指摘しています。つまり、意図的に見えやすくしていた条件下の話であり、実戦装備のF-35に対して同じ結果が常に再現されると断定できるものではない点には注意が必要でしょう。

 とはいえ、こうした技術開発は世界中で進んでおり、日本でも防衛装備庁において、既存の放送や通信電波を利用して探知する方式について以前から研究が行われています。また、複数のアンテナを協調させる高度なレーダーの研究も続けられています。

 どちらかが完全勝利することはない、空の裏側で続く「最強の盾」と「最強の矛」の激しい競争。かつての「見えない戦闘機」が、「なんとかして見つける対象」へと変わっていく歴史の転換点に、私たちは立ち会っているのかもしれません。

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