2026年2月にシンガポールで開催された航空・宇宙展示会「シンガポール・エアショー2026」で、中国の大手軍用機メーカーであるAVIC(中国航空工業集団)が参加しました。同社では実機の展示こそありませんが、展示品の中で特に目立ったのは、ブース中央に置かれたJ-35Aステルス戦闘機の大型模型です。
【写真】えっデカ…「プリンセス」と称されたJ-35Aを様々な角度から見る
J-35は中国の国産ステルス戦闘機で、中国初のステルス戦闘機J-20と比べると機体サイズは小さく、外形はアメリカ製のF-35「ライトニング」を想起させる点も指摘されています。
展示されたのは空軍向け陸上型のJ-35Aの模型でしたが、同機は空母に搭載できる艦載機型のJ-35も存在しています。艦載型は中国初のリニアカタパルトを装備した国産空母「福建」での運用を想定していて、従来のスキージャンプ式のJ-15艦載機と比べて能力が向上していると考えられており、中国海軍の航空戦力の進歩を象徴するシンボル的な存在といえるでしょう。
中国の最新鋭ステルス戦闘機が展示されたという事実は、模型であっても会場では大きな注目を集めていました。
最新鋭機を展示した中国側の意外な理由AVICがJ-35Aを展示会に出品した理由については、真っ先に思いつくのは外国への輸出です。J-35Aはもともと海外輸出も想定したステルス機のデモンストレーターFC-31がベースとなっており、その事から同機の海外輸出も行なわれるのではないかとの憶測がささやかれています(もしくは輸出専用モデルを派生型で開発)。しかし、現地でAVICの社員に直接聞いたところ、J-35A自体の輸出についてはその可能性を否定していました。
そこで「では、海外に売らない戦闘機を国際展示会に展示した理由は何ですか?」と聞いてみたところ、AVICの社員はとてもユニークな言い回しで、意外な理由を教えてくれました。
「これ(J-35A)はプリンセスです。この戦闘機は中国の最新鋭戦闘機であり、その存在感を世界に示すために設計されました」(AVIC社員)。つまり、簡単に言ってしまえば、最新鋭戦闘機の存在は中国の兵器開発能力をアピールするための格好の題材であり、今回のシンガポール・エアショーではそれを主役として据えたということになります。
展示会での対応が変化してきた中国企業中国の防衛企業がシンガポール・エアショーのような海外展示会に出展するのは今回が初めてではなく、2020年頃から欧州や中東の展示会にも積極的に参加していました。
J-35AはF-35に非常によく似ているが、こちらはエンジンが2つ搭載された双発機となっている(布留川 司撮影)。
しかし、今回のシンガポール・エアショーでのAVICのブースでは「ここはパブリックな展示会なので撮影はご自由に」と言われ、その対応が大きく変化していました。その理由は筆者が想像するに、展示会参加の回数を重ねたことと、自社製品を見せることで中国の防衛技術と国威をアピールするようになったと思われます。
兵器というものは、他国から見れば安全保障上の潜在的な脅威と受け取れます。しかし、保有している側から見れば、それは国防と安全保障のための抑止力にもなり、国産兵器であれば自国の技術的なアピールにも繋がります。客観的に見れば今回のAVICによるJ-35Aの展示は、単なる模型を会場に置いただけのように映ります。しかし、その背後には、中国が世界へ向けて軍事技術大国としての存在感を出そうという意図も読み取ることもできるでしょう。

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